OplusE 2015年10月号(第431号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
世界に誇れる日本の光学技術
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■回折限界を破る超解像蛍光顕微鏡
- ニコン 照井 勇輝
- ■光コヒーレンストモグラフィーの進化
- マイクロトモグラフィー 丹野 直弘
- ■面発光レーザー:研究の経緯と発展
- 東京工業大学 伊賀 健一
- ■フォトニック結晶研究の経緯と現状
- 京都大学 野田 進
- ■太陽系外惑星と宇宙における生命の観測
- 東京大学 田村 元秀
- ■光触媒の研究の経緯と現状
- 東京理科大学 角田 勝則,中田 一弥,藤嶋 昭
特別企画
- ■画像センシング展2015 誰にでもわかる「特別講演」レビュー
- セコム 黒川 高晴
連載
- ■【一枚の写真】光触媒を活性化するメカニズムの一端を解明
- 神戸大学 大西 洋
- ■【私の発言】いろいろな経験を積むためにも学生にはできるだけ海外で洗礼を受けさせる
- 早稲田大学 教授(応用物理学) 中島 啓幾
- ■【波動光学の風景】第114回 116.周期的な構造
- 東芝リサーチ・コンサルティング 本宮 佳典
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第32章 光ファイバー:光で紡ぐ世界(その3)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■【コンピュータイメージフロンティア VFX 映画時評】
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】高度化・複合化する絵本の「しかけ」
- 映像技術史研究家 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
特集にあたってO plus E 編集部
今年は国際光年であり,世界に貢献する日本の光学技術を特集した。今月10月はノーベル賞の月でもある。陰暦10月は神無月で神様はみんな出雲に集まるが,現代では世界中の目がストックホルムに集まる。昨年は物理学賞も化学賞も光に関する仕事に与えられたが,またまた光でノーベル賞が出るような予感もする。そもそも,光がかかわったノーベル賞というのはかなりあると思う。アインシュタインも光電効果の理論で受賞しているのである(相対論も,誘導放出の理論も光であるが)。ノーベル賞のなかった1900年以前においても光には多くの天才たちが関わっている。古典的な結像光学に関する分野だけでも,ニュートン式望遠鏡,ニュートンの公式,ガリレオ型望遠鏡,ガウス光学,ガウスタイプ,フェルマーの原理,デカルト(スネル)の法則,マックスウェルのフィッシュアイ,ヘルムホルツ―ラグランジの不変量,……と教科書に出てくる大物理学者,大数学者がたくさんいる。
日本の光学関連技術は世界的にも十分評価されていると思われる。ノーベル賞の選定の基準は,科学的に深遠な原理の発見,技術的なブレークスルー,世の中の進歩への貢献かと思うが,それらに値する発明や発見が多々ある。また,これから大きく寄与することが期待される技術開発も数多く進められている。いつもの企画とは異なり,斬新な発明発見とは何だろうか,どのように生まれ発展していくのだろうか,というような観点から特集を組んだ。どの原稿も心を揺さぶるものがあり,O plus Eの読者にはぜひとも通読していただきたい。
昨年は物理学賞,化学賞とも光に関するものであった。日本では物理学賞は当然であるが大きく騒がれているが,化学賞は余り報道されていない。3つの超解像蛍光顕微鏡に絡んだもので,実用化については日本も大きく関わっていると聞いており,これらの肝を「回折限界を破る超解像蛍光顕微鏡」と題して,ニコンの照井勇輝さんに分かりやすく説明していただいた。
元山形大学教授でマイクロトモグラフィー株式会社元技術顧問の丹野直弘さんには,「光コヒーレンストモグラフィーの進化」と題して,OCTについて書いていただいた。どんなアイデアもそれを発明と気づかなければ,何も生まれてこない。発明当初のエピソードも交えて開発の端緒を生き生きと述べていただき,さらに実用化に向けての課題とその克服の流れが良く理解できた。
面発光レーザーについて,東京工業大学名誉教授の伊賀健一さんに「面発光レーザー:研究の経緯と発展」と題して書いていただいた。まくら元のノートに書き留めた着想から始まり,壮大な研究開発を続けられてきたことが,ひしひしと伝わってきた。技術的な面でも人間的な面でもエピソードを交えて書いていただき,伊賀先生の学者としてだけでなく,組織を牽引する強力なリーダーシップが,言外を含めて強く感じられた。「国際会議に辛抱強く論文を投稿…」と,苦労があったことも知り,若い研究者には激励に成るのではないだろうか。さらに,今後の応用や展開についても詳しく述べていただいた。
「フォトニック結晶研究の経緯と現状」と題して,京都大学教授野田進さんに書いていただいた。分布帰還形半導体レーザーの研究から2次元3次元のフォトニック結晶の着想を得て開発を始められたということであるが,米国でも同様の着想が生まれていて心強く感じられたと書かれている。優れた発見や発明には,周りが納得してくれるのだろうかという一抹の不安があるのであろう。その後の大きな発展と様々なアイデアを,例えば熱輻射制御において「光子系のみならず,電子系の状態をも制御…」など,分かりやすく述べていただいた。
宇宙には専門家だけでなく,老若男女を問わず夢を持っている。太陽系外惑星,それも生命の住んでいる惑星となると,誰もが心を躍らせるのではないだろうか。東京大学教授田村元秀さんには「太陽系外惑星と宇宙における生命の観測」と題して書いていただいた。日本のすばる望遠鏡がすでに惑星の直接観察で多くの発見をしており,さらにTMT望遠鏡を活用して地球外惑星の直接撮像が計画されているということで,まさに世界に貢献する技術で,多くの人が期待をされていると思う。
東京理科大学の角田勝則さん,中田一弥さん,藤嶋昭さんには「光触媒の研究の経緯と現状」と題して,光触媒の基本原理から分かりやすく書いていただいた。すでに酸化チタンは実用に寄与しているが,酸化チタン構造の次元性を制御して様々な特性を得る研究がすすめられていることが紹介されている。人類が生存発展していく上でのもっとも大きな課題である,環境やエネルギー問題への貢献が期待される。
発見や発明の歴史から,最近の発展,今後の進展など,第一人者の方々に,いろいろな切り口から書いていただいた。研究開発への熱い心がにじみ出てくる,技術の神髄に触れた原稿ばかりで,あらためて日本の技術の底力を感じることができた。強い好奇心が独創的な発明や発見,そしてさらなる発展につながっていることが伝わってくる。著者の方々に心より御礼申し上げる。この他にも世界に貢献する多くの技術があり,それらすべて紹介することはできなかった。しかし,今回世界に誇れる日本の光学技術を振り返ることが,多くの研究者,特に若手研究者への鼓舞となれば幸いである。
広告索引
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