OplusE 2016年10月号(第443号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
バイオイメージング最前線
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■バイオイメージングツールの解像限界~光学過程との関係~
- ニコン 福武 直樹
- ■超高速イメージングで生命科学
- 東京大学 三上 秀治,雷誠,鈴木 祐太,小関 泰之,合田 圭介
- ■マルチモーダルデジタルホログラフィック顕微鏡による細胞ライブイメージング
- 神戸大学*,京都工芸繊維大学** 的場 修*,全香玉*,粟辻 安浩**
- ■蛍光寿命測定による細胞内温度イメージング
- 奈良先端科学技術大学院大学*,東京大学** 稲田 のりこ*,内山 聖一**
- ■MRIでマウス生体内の免疫細胞の動きを視る
- 大阪大学 森 勇樹,吉岡 芳親
特別企画
- ■画像センシング展2016 招待講演レビュー
- NECデータサイエンス研究所 佐藤 敦
連載
- ■【一枚の写真】「生体の窓」を使った明るい蛍光観察が可能で生体毒性のないバイオマーカーを開発
- 物質・材料研究機構 白幡 直人
- ■【私の発言】偶然もあとから見るとほとんど必然
- 千葉大学 尾松 孝茂
- ■【第11・光の鉛筆】11 HelmholtzからKönigへ1 混色装置の概要と1色性色覚異常の測定
- 鶴田 匡夫
- ■【波動光学の風景】第120回 122. 螺旋構造による分極と磁化
- 東芝リサーチ・コンサルティング 本宮 佳典
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第44章 光に有機を(その2)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■コンピュータイメージフロンティア
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】てぬぐいとお菓子の容器から,動くしかけ絵本のリストへ
- 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
蛍光試薬により特定の組織を標識して観察可能な蛍光顕微鏡は,ますますその重要性を増している。図は周波数分割多重化された共焦点顕微鏡による取得画像で, 直径6μmの蛍光ビーズを16,000frames/sという従来よりも桁違いに高いフレームレートで取得している。(関連記事「超高速イメージングで生命科学」東京大学 合田 圭介ほか:詳細は924ページ)
特集にあたってO plus E 編集部
バイオイメージング最前線
O plus Eでは,ここ数年,「光と医療」や「レーザー顕微鏡」など,光と医療,バイオロジーに関係した特集を取り上げてきた1)~4)。近年では,超高解像度や生体を生きたまま観察するなど,バイオロジーにおける新しい高速イメージングが注目を集めている。そのきっかけの一つとなったのは,2014年のノーベル化学賞を受賞した米ハワード・ヒューズ医学研究所のベッツィヒ,独マックスプランク研究所のヘル,米スタンフォード大学のモーナーの3人による「超高解像蛍光顕微鏡の開発」である。従来の光学顕微鏡にはアッベの回折限界があったが,このブレークスルーによってナノメートルオーダーの解像力を持つことが可能となった。これは光学分野における輝かしい業績であり,これらの技術により,生きた細胞内の微小構造の観察への道が開け,活発に議論・研究が行われている。そこで今月の特集では,「バイオイメージングの最前線」と題して,生きたままの細胞内を非侵襲で,従来の顕微鏡レベルの回折限界を超える細かい構造を時系列にイメージングできる,新しい高速イメージングの技術を紹介する。
まず,ニコンの福武直樹氏には,「バイオイメージングツールの解像限界 ~光学過程との関係~」と題して,線形,非線形やコヒーレント,インコヒーレントのあらゆる光学過程を利用した解像限界の理論的枠組みの解説をお願いした。様々な光学系に解像度の理論的限界について議論されている。
次に,東京大学の三上秀治・合田圭介氏らのグループには,「超高速イメージングで生命科学」と題して,広帯域レーザーパルスの波長成分を情報のキャリアとして,物体の空間情報を時間波形に変換して取得する超高速の時間ストレッチイメージングについて解説をお願いした。周波数分割多重化共焦点蛍光イメージング法においては,直径6μmの蛍光ビーズを16,000frames/sという桁違いに高いフレームレートでの取得の可能性や,誘導ラマン散乱(SRS)顕微鏡における動くユーグレナの分子を10frames/sの高速イメージングできたことが報告されている。これらの細胞計測結果を瞬時に解析し,所望の細胞を分取するとともに,分取した細胞の遺伝子解析に発展させるという。
神戸大学の的場 修氏らには,「マルチモーダルデジタルホログラフィック顕微鏡による細胞ライブイメージング」と題して,位相3次元と蛍光2次元像を同時取得するマルチモーダルデジタルホログラフィック顕微鏡について解説していただいた。ここでは,ヒメツリカネゴケの正常な細胞をタイムラプスで撮った画像の検出を可能としている。これらは,植物細胞の幹細胞化プロセスを観察するシステムとして今後が期待される。
奈良先端科学技術大学院大学の稲田のりこ氏らには,「蛍光寿命測定による細胞内温度分布イメージング」について解説していただいた。温度変化によってポリマーの構造が変化する蛍光温度プローブの蛍光寿命を測定することで,ミトコンドリア周辺の温度が細胞質の他の部分と比較して高いことを実験的に示している。バイオの研究者が求めている細胞内温度計測を可能としており,今後の発展が期待される。
最後は,大阪大学の森 勇樹氏らに,「MRIでマウス生体内の免疫細胞の動きを視る」と題して解説をしていただいた。MRI装置そのものの高磁場と高周波コイルの最適化,超常磁性ナノ粒子の細胞指標プローブの最適化で1細胞レベルの分解能を持つイメージングを可能としており,さらに,マウスの脳の免疫細胞をレベルでタイムラプスの可視化ができている。MRIの分解能が光学的手法の分解能に近づいてきており,両者の関係が今後,ますます楽しみである。
以上のように,本特集は,最新のバイオイメージング技術を基礎から応用まで網羅し,様々な視点から解説していただいた,今後,これらの技術を用いた新規なイメージ情報から生物の新しい発見がなることを願っている。
最後に,ご多用中にも関わらずご執筆をご快諾いただいた著者の皆さま,関係者の皆さまに心から感謝申し上げる。
1)O plus E 2015年5月号,特集「医療を支える最新光技術」
2)O plus E 2014年2月号,特集「より深く,より細かく観察する高機能レーザー顕微鏡」
3)O plus E 2012年11月号,特集「医光連携」
4)O plus E 2012年3月号,特集「医師からみた光医療最前線」
広告索引
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