OplusE 2017年1月号(第446号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
O plus E 4.0
- ■特集にあたって
- 三次元工学会 吉澤 徹
- ■インダストリー4.0と光通信システム
- 島田 禎晉
- ■光メモリの時代からAI/IoT/M2M活用時代へ
- 元 東海大学 後藤 顕也
- ■ホログラフィーとつきあって57年
- 東京工業大学名誉教授 辻内 順平
- ■X線CT技術
- ニコン 鈴木 一明
- ■展望「レーザー工学⇔レーザー光学」
- 慶應義塾大学 神成 文彦
- ■中小企業への期待
- 武蔵野銀行 山本 碩德
- ■IoTによる価値創造とセンシング技術への期待
- 住友重機械工業 山﨑 和則
- ■IoT時代のNODIF
- コニカミノルタ 瀧谷 俊哉
- ■光学教育問題
- 東海大学名誉教授*,東海大学** 若木 守明*,渋谷 猛久**
- ■日本の光学工業の父 山田幸五郎先生の本
- フォブ 大出 孝博
- ■光学の初等読み物
- 三次元工学会 吉澤 徹
連載
- ■【一枚の写真】地球に似た軌道を持つ惑星の誕生現場をアルマ望遠鏡が捉えた
- 自然科学研究機構国立天文台 平松 正顕
- ■【私の発言】異なる分野の連携が難しいのは目指すものが違うから
- 東海大学 山口 滋
- ■【第11・光の鉛筆】13 HelmholtzからKönigへ 3 基本色感覚曲線の推定
- 鶴田 匡夫
- ■【干渉計を辿る】第3章 面形状測定用干渉計 3.2 干渉計の信号処理と計測精度
- 市原 裕
- ■【光エレクトロニクスの玉手箱】第47章 地球を一つに:光通信システム(その1)
- 伊賀 健一,波多腰 玄一
- ■コンピュータイメージフロンティア
- Dr.SPIDER
- ■【ホビーハウス】変わった「合わせ鏡・万華鏡」の話題
- 鏡 惟史
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
1895年のレントゲンによるX線の発見以来,X線は医療診断方法として使われて来たが,複数の透視画像から立体像を再構成するという夢の実現には,数学による定式化とコンピューターの発達を待つ必要があった。写真は1971年に開発された脳用CT Scannerである。(関連記事「X線CT技術」ニコン 鈴木 一明:詳細は38ページ)
特集にあたってNPO法人 三次元工学会 吉澤 徹
O plus E 4.0
本誌の新年号特集に関して,ここ数年間は過去を踏まえながら近い将来をみつめようという立場から,多くの皆さまのご協力を得ながらオムニバス執筆形式による“回顧と展望”を意識しながらその内容をまとめてきた。しかし,その“回顧”の正当性,あるいは“展望”に際しての予測の適切さを高めることは容易ではない。2,3年先までであればで現在の延長線上としての予測が容易であるように思われるにも関わらず,実際は天然災害であるとかテロ事件のような突発事故もあって,極めて近い将来に関してすら予測を立てにくい。ましてや10年以上先の遠い未来に関しては,展望というよりはむしろ予定調和説にみられるような単なる願望を述べているにすぎない場合が多い。しかしながら読者の皆さまの中には,「翌年に予測が的中しなくても,10年を経て読み返した折に,『ああこんなことが書かれていたのだ』と振り返ることがあってもいいのではないか」とおっしゃる方もおられる。そうした経緯もあって,あえて今年も基底においては極めて類似する構想のもとに今年1月号の特集号を組み上げることとした。さて,そこで近年もっとも急速に広まった基本事実の一つに,科学技術の急激な進歩と社会構造の変革と転換が背景として存在する厳然たる事実を踏まえながら,その一方でさらなる進展を求めざるを得ないという状況が存在する。その結果として,現実として憂慮される経済界の閉塞状況を打破するために,ドイツより提唱された“Industry (ドイツ語表記でのIndustrie) 4.0”,またこれに呼応した米国が推進する“Indusrial Internet Consortium”などの例に見られるように,生産および製品の管理物流を効率的に行おうという概念が拡がりつつある。このことは,あらゆるものがインターネットでつながるという“IoT”の考え方を具現化するものであって,産業システムのデジタル化とデータ化によって得られるビッグデータの活用により「第4次産業革命」をもたらすものと期待されている。このような背景を踏まえて,光応用技術,画像関連技術,オプトエレクトロニクスなどに関して,過去と現状をあらためて振り返り問題点を検討して,さらには今後を見つめることとしたい。ここでは単なるアカデミックな議論ではなくて,最終的には産業応用を意図しているために,基礎的概念的な内容というよりは,「技術をどう使うか」,そのためには「どのような問題があるか」という立場から,あえて体系化した議論にはこだわらずに,ご執筆いただく方がたそれぞれの視点からご意見を述べていただくこととする。回想にウエートをおいた見解もあれば,将来はこうなるべしといった気概にあふれた論説もあろう。さらには行間から密かに滲み出す意図を汲み取ることもできよう。
さて,話題となっている“4.0”であるが,この表現には80年に出版されたアルビン・トフラーによる「第三の波」が大きく影を落としている。さらにそれ以前の70 年には「未来の衝撃」が発表されている。狩猟に依存した生活が農業に移り変わり,人間は定着地を求めた。さらには産業革命による工業化で人類の生活が一変し大量消費社会が出現した。そうした背景の中で情報化社会の到来を予言したトフラーの書は思い返しても衝撃であった。それとともに,特に光学技術関係者にとっての大きな話題は,ホログラフィの発明者として71年のノーベル物理学賞を得たデニス・ガボールが,未来予測の立場から「成熟社会」を72年に刊行していたことで革命の重大性を指摘するとともに社会構造の変革を的確に予知していた。およそ半世紀を経た現在となって振り返ってみても,トフラーの予知能力の高さには目を見張るものがあり,ロボットだ,人工知能だ,車の自動運転だと騒ぐ一方で,こうした改革は弊害をもたらしやすく,多くの対立や衝突が起き,人間に対する負の技術にすぎないという考え方に対しても,それは人間が英知を計って解決をもたらすべきであると予言していたと考えられる。実は本特集号の検討を進めていた最中の2015年6月末にトフラーが87歳で死去したというニュースが伝わってきた。トフラーがいかに的確に現実と未来を見据えていたという証左のもととなったのは,彼が単に理屈の上での評論家的な未来学者ではなくて,大学卒業後に5年間を工場での従業員となって溶接工として働き,現場で作業しながら機械と人間,職場における人間をつぶさに観察したという経験と職歴にあると言えよう。
さて,それでは“O plus E”におけるこれまでの革新的技術1.0,2.0,3.0は何であったのかというオーソドックスな取り組み方をすべしと主張する立場からは,例えばレーザ技術,コンピューター技術,通信技術,各種のデバイス技術を取り上げて検討を加えることとして,サンプル例としていくつかの個別技術についての項目的な展望を試みたつもりである。
さらには今後期待すべき技術に関しても,センシングの立場で強く指摘されているように,多くの最新技法により,「いつでも,どこでも,なんでも計測できる」状況となり,ビッグデータが短時間に得られている。この結果をいかに利用すべきかについて関連する方がたとの検討を行った。多品種少量生産,場合によれば個々人の好みに応じた製品の製造が必要であり,考えようによれば医療分野への応用などはまさしく患者個々人への最適な対応の仕方が必須であろう。生産分野ではビッグデータを踏まえて,特に最適な生産システムを構築すべきであって,新しいセンサーとともに次の世代に対応できるセンシングシステムを生み出さねばならない。それと同時に,近年は規格化や標準化を進めるべしという風潮が強いが,ある意味ではこれもビッグデータをいかに使いやすくするかという意味では現在の風潮にどのように対応していく,あるいは対処していくのか興味深い。ドイツのプラットホーム4.0と米国のIIC(現時点で250以上の団体が所属と思われる)が連合,連帯に至りつつあることも彼らのグループがデファクトとしての産業界の考え方として位置づけられつつある傾向にある。
最後にこうした背景にあって生じるであろう問題点,あるいは従来型の産業形態との整合性をとり,速やかに問題点を解決していくためにはインフラ(社会構造)に関する問題を意識せねばならないと考える。特に人々の意識を構成するうえでの最重要事項は教育であり,それには長いスパンが必要とされる。すぐにあげられる典型例である教育問題としては,ゆとり教育はどうなったか,大学生の能力低下,本誌の立場からは「光学教育の現状は?」などが気になるところである。産業界からみるならば,若年生産年齢人口の減少が背景にあり,さらに蓄積したデータからいかにして新生産方式と体制を敷くべきか,またビッグデータをどう活用して新製品や新サービスを生むかなどの問題がある。
以上にかいつまんで述べたように,本特集には取り上げるべき数多くの問題点や議論すべき事項がある。これらに関して数回にわたって編集同人会での議論を行った結果,今回の項目を決めるに至ったが,さらに取り上げるべきいくつかの重要な問題があることはご指摘を待つまでもない。例えばインフラに関与する例として,最近では土木建設業界におけるi-Constructionという概念なども紙幅の関係もあって採りあげることができなかったのは心残りである。さらに話を広げるならば,トフラーが予測した「オフィスにおけるペーパーレス化」や「人間のクローン登場」が実現していないなどがあるが,これは本誌がカバーする範囲からは逸脱しているのであろう。あくまでも,本号を一つの参考としてお読みただきながら,現在の産業界に寄与する道を模索していただければ幸いである。
広告索引
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