OplusE 2020年1・2月号(第471号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
光通信は空へ,海へ,量子の世界へ
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■光衛星間通信 宇宙開発&利用を支える次世代宇宙通信基盤技術
- 宇宙航空研究開発機構 山川 史郎
- ■静止衛星-地上間の超高速光衛星通信
- 情報通信研究機構 久保岡 俊宏
- ■5G時代の光通信-無線・光通信を繋ぐデバイス・システム技術-
- 三重大学 村田 博司
- ■青色LDを用いた水中LiDAR
- トリマティス 島田 雄史,鈴木 謙一
- ■商用化された光無線通信装置による海中非接触データリンク
- 東京海洋大学*,海洋研究開発機構** 山中 寿朗*,後藤 慎平*,澤 隆雄**
- ■水中ギガビット高速可視光無線通信技術
- 山梨大学 中村 一彦,塙 雅典
- ■量子技術を用いた暗号通信の最近の進展
- 玉川大学 二見 史生
- ■PPLN導波路を用いた位相感応増幅器とコヒーレントイジングマシン応用
- NTT先端集積デバイス研究所*,NTT物性科学基礎研究所** 梅木 毅伺*,稲垣 卓弘**,風間 拓志*,笠原 亮一*,武居 弘樹**
特別企画
- ■国際画像機器展2019 特別招待講演【ロボットビジョン】
- 大阪工業大学 奥野 弘嗣
- ■国際画像機器展2019 特別招待講演【ディープラーニング】
- NECデータサイエンス研究所 佐藤 敦
連載
- ■【一枚の写真】フルカラーを志向したエレクトロクロミック電子ペーパー
- 千葉大学 小林 範久
- ■【oe 玉手箱のけむり】その5 フォノンとフォトン
- 伊賀 健一
- ■【私の発言】いかに自分を納得させ進めるかが重要 自分が納得できないものには人はついてこない
- 藤原 義久
- ■【輿水先生の画像の話-魅力も宿題も-】第13回 似顔絵はAIで描けるか?―等身大の科学技術,その幕開けを見る―How could AI Facial Caricaturing be Possible via Image Technology? - As a Beginning of Life-sized Science and Technology -
- YYCソリューション/中京大学 輿水 大和
- ■【光学ゼミナール】第13回 収差
- 宇都宮大学 黒田 和男
- ■【波動光学の風景】第140回 142. 代表的な補償板
- 東芝 本宮 佳典
- ■【干渉計を辿る】【最終回】第13章 干渉計 補足
- 市原 裕
- ■【研究室探訪】vol. 13 中央大学 梅田研究室(知的計測システム研究室)
- 中央大学 梅田研究室(知的計測システム研究室)
- ■【国立天文台最前線 第11回 次世代のVLBI技術へと向かう水沢VLBI観測所
- 荒舩 良孝
- ■【ホビーハウス】LED光源と本-光と影
- 鏡 惟史
- ■【コンピュータイメージフロンティア】『アイリッシュマン』『イントゥ・ザ・スカイ ~気球で未来を変えたふたり~』『キャッツ』ほか
- Dr.SPIDER
- ■【ホログラフィ・アートは世界をめぐる】第13回 太陽の贈り物シリーズ part 2 U・F・Oと巨石遺跡―黒い森からブルターニュへ
- 石井 勢津子
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
国立研究開発法人情報通信研究機構小金井本部にある光衛星通信実験用の口径1. 5 mの反射望遠鏡。低軌道を周回する人工衛星を追尾可能な望遠鏡としては日本最大級である。画像は,2019年1月18日に打ち上げられた50 cm角サイズの小型衛星RISESAT(東北大学が中心となって開発)との人工衛星レーザー測距実験で,衛星に搭載した反射器でレーザー光を反射させて光の往復時間を測定するため,高度約500 kmの低軌道を周回する衛星を追尾しながら,波長0.532μmのレーザーを衛星に向かって射出中の様子である。(関連記事「静止衛星-地上間の超高速光衛星通信」情報通信研究機構 久保岡 俊宏:詳細は29ページ)
特集にあたってO plus E 編集部
光通信は空へ,海へ,量子の世界へ
光通信の関連技術の進展への期待が広がっている。1980年代半ばに日本の基幹通信網に実用化された光ファイバー通信技術は,堅調に信号あたりの速度を高速化しながら伝送距離も長距離化を進め,海底ケーブルにも用いられるようになった。その後,1990年代半ば以降のインターネットの世界的な広がり・ビジネスでの活用の拡大を背景に,さらなる高速・大容量化が進んだ。技術的には,半導体レーザーの波長可変動作や光増幅器の低雑音化,光変調器の波長変動(チャープ)抑制手法や受光器の高出力化・高感度化,光ファイバーの低損失化が背景にあった1)。さらに,2010年代にはデジタル信号処理回路の高速化を味方に,直接検波方式に代わってコヒーレント検波方式が導入され,半導体レーザーの狭線幅化や集積度の大規模化,変調方式や符号化技術の発展,空間分割多重技術の研究開発の進展とともに性能・機能性が大きく向上している2)。しかしながら,光通信で培われた関連技術は光ファイバーで結ばれた範囲での技術にとどまらない。以前より地道に検討はされていたものの,近年は光ファイバーから跳びだした領域や応用への検討が進展するようになっている。
空間を光でつなぐ通信技術としては,衛星間あるいは衛星と地上間の通信への拡張がみられる。従来は電波での通信を行ってきた領域であるが,衛星の扱う情報が詳細な地上のデータであったり画像情報であったりするとデータ量が大きくなるため,搬送波の高周波な光領域が求められるようになっている。光ファイバーの通信波長帯の吸収と比べて真空中の吸収が少ないことから,長距離の空間伝搬が潜在的に可能である。ただし,光ファイバーと圧倒的に異なるのは,衛星が超高速に移動する物体であり,また,光を空間伝搬させるために光線の拡がりが避けられず,地上と衛星間の通信においては,大気揺らぎや天候の影響も考えなければならない。その克服技術が不可欠である。また,地上の利用方法に目を向けてみると,高速モバイル信号を光ファイバーで伝送し,狭い空間に多数のユーザーが存在するような領域に,照射ビーム角度の狭い無線信号を提供するような利用法も検討されている。この際,光信号を無線信号に直接変換するような小型の集積デバイスが有効である。
一方,海洋での光を用いた通信の検討も行われるようになっている。深海の映像を4Kレベルで観測することを考えると,大容量データを深海艇まで送ることが考えられる。しかしながら,地上との大きな違いは海底での高圧に設備が絶えなければいけないため,接続部品を不要とする伝送が求められる所以となっている。キロメートルのような長距離ではないが,メートルオーダーで毎秒ギガビットの高速伝送の意義も高くなっているとも思われる。水中での物体の位置観測のためのLiDAR技術としても,光が活躍する場が増える可能性が出てきた。
さらに,量子情報分野の領域への光通信関連技術の進出もみられるようになった。近年,組合せ最適化問題に,従来コンピューティング技術をはるかに凌ぐ性能の可能性を示している量子コンピューティング技術が一例である。この技術には様々な物理現象での実現を目指した取り組みが進んできているが,光ファイバーリングレーザーのモード状態をうまく利用して,組合せ最適化問題の解に当てはめる技術が,その状態数の多さや安定性で他の技術より今のところ高い性能を示しているようである。量子的な技術としては,従来の暗号技術の秘匿性を大きく超える暗号技術にも検討が進んでいる。
以上のような光通信関連技術の応用の拡大を背景に,今回上記の3つの展開に関する最近の研究・開発に携わる方々にご執筆いただくこととした。最初の3件は「空」への展開として,衛星間について宇宙航空研究開発機構(JAXA)の山川氏,衛星―地上間について情報通信研究機構(NICT)の久保岡氏,光と無線間をつなぐ技術として三重大学の村田氏にご執筆いただいた。続く3件は「海」への展開として,必ずしも通信そのものではないが光源利用と解釈を拡大して水中LiDARについて株式会社トリマティスの島田氏ら,深海の観測データ取得装置と海洋移動船との間の通信に関して東京海洋大学の山中氏ら,水中光通信の高速化技術について山梨大学の中村氏・塙氏にご執筆いただいた。最後の2件は,「量子の世界」への展開として,量子暗号の1方式について玉川大学の二見氏,および量子コンピューティングへの応用を念頭においた位相感応型増幅器の検討状況についてNTTの梅木氏らにご執筆いただいた。
2019年1・2月号は,平成31年の発行であった。本号は,新しい元号「令和」になって初めての年頭の発刊号となる。またご存じのとおり,夏には日本で2回目の夏季オリンピックが東京および札幌で開催となる。この機に,光通信に関連する技術の今後のあらたな展開を多少なりとも感じ取っていただき,関係者への刺激となれば幸いである。
1)概要については,伊賀健一,波多腰玄一:「光エレクトロニクスの玉手箱III」,第47~49章,pp. 178-218, アドコム・メディア(2019)を参照されたい。
2)鈴木正敏,森田逸郎,秋葉重幸:「長距離光ファイバ通信システム」,オプトロニクス社(2019)
広告索引
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