OplusE 2021年1・2月号(第477号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
Nanostructured Optics
- ■特集にあたって
- O plus E 編集部
- ■光メタマテリアルと赤外分光
- 理化学研究所,徳島大学 田中 拓男
- ■凹から凸まで幅広く切り替わる回転型可変焦点モアレメタレンズ
- 東京農工大学 岩見 健太郎
- ■金属ナノ構造を用いたプラズモニックカラーフィルタリング
- 静岡大学 小野 篤史,宮道 篤孝,香川 景一郎,安富 啓太,川人 祥二
- ■ガス分析適用をめざした電圧変調型バンドパスフィルターの開発
- 堀場製作所*,京都大学** 粟根 悠介*,**,井上 卓也**,野田 進**
- ■回折光学素子の設計評価技術~光線追跡から電磁場解析まで~
- 大阪大学 水谷 康弘
連載
- ■【一枚の写真】大気の揺動
- 東京工業大学 松谷 晃宏
- ■【oe 玉手箱のけむり】その11 原子時計と光
- 伊賀 健一
- ■【私の発言】光学技術や精密工学技術のいろいろな領域で世界のトップレベルまで引き上げなければいけないという使命感みたいな気持ち(前編)
- 元(株)ニコン 代表取締役副社長 鶴田 匡夫
- ■【輿水先生の画像の話-魅力も宿題も-】第19回 続・続・画像AI 研究からいただいた諸子百家のメッセージ―研究開発の“うひ山ふみ”への着火剤―The Third: Messages from Hundred Schools of Thought to Image AI novice Researchers- Some Initiators for R&D “UI-YAMAFUMI” People –
- YYCソリューション/中京大学 輿水 大和
- ■【撮像新時代CMOSデジタルイメージング】第1回 連載を始めるにあたって【新連載】
- 名雲技術士事務所 名雲 文男
- ■【レンズ光学の泉】第1章 結像の自由度 1.3 物体移動による収差
- 渋谷 眞人
- ■【研究室探訪】vol. 19 東京農工大学 岩見グループ(MEMS/NEMS・メタサーフェス研究室)
- 東京農工大学 岩見グループ(MEMS/NEMS・メタサーフェス研究室)
- ■【国立天文台最前線】第17回 ハワイの人たちと共に巨大望遠鏡の建設を目指すTMTプロジェクト
- 荒舩 良孝
- ■【ホビーハウス】画面上の視線一致について:技術史の片隅から
- 鏡 惟史
- ■【コンピュータイメージフロンティア】『ミッドナイト・スカイ』『ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画』ほか
- Dr.SPIDER
- ■【ホログラフィ・アートは世界をめぐる】第19回 台湾交流録 part5 建築空間へ
- 石井 勢津子
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■PRODUCT REPORT
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
従来の可変焦点メタレンズは,可変焦点機能を付与すると大型化してしまったり,焦点の可変範囲が狭いという問題があった。図のように,研究室で作成した回転型可変焦点レンズであるMoireメタレンズは,2枚のレンズからなり,お互いに回転させることで凸レンズにも凹レンズにもなる。これは,焦点距離が正(凸レンズ)から負(凹レンズ)に連続的に変化することに対応する。また,回転させるだけで焦点距離が変わるため,通常のズームレンズのようにレンズ間に間隔を必要とせず,小型化に適している構造であることが特徴である。(関連記事「凹から凸まで幅広く切り替わる回転型可変焦点モアレメタレンズ」東京農工大学 岩見 健太郎:詳細は28ページ)
特集にあたってOplusE 編集部
Nanostructured Optics
わが国,日本の「精密工学の父」と仰がれている,故 谷口紀男先生が,1974年に「ナノテクノロジー(Nano Technology)」という言葉を用い,その概念を提唱され,今年,2021年で47年になる。ナノ(nano)は10−9,10 億分の1 を意味する単位系記号であり,長さの1 nmの1,000 倍が1 μm,さらに1,000倍が1 mmである。
ふだんわれわれが認識している世界とは似ても似つかぬ値であるので,身近な例と比較すると,人間の手の大きさは20 cm,200 mm,日本人の髪の毛の太さは約80 μmとされている(もちろん個人差はあるが)。
これから飛散量が増えるスギやヒノキの花粉の直径は約40 μm,新型コロナウイルスの外観(コロナとは「太陽の光冠」の意でその形が似ていることからコロナと名付けられた)を含めた直径は約100 nmとされている。
人工的に形成する最も微細なパターンであろう最先端の半導体デバイスに関しては,来年の2022年より3 nmプロセスを用いた商業生産が開始される予定であり,そのための製造装置,検査装置が本年中に導入される予定になっている。
光学の技術分野においては,ナノフォトニクス(Nanophotonics)やナノオプティクス(Nano-optics)とも呼ばれているナノメートルオーダーの構造をした光学系,Nanostructured Opticsは,ナノテクノロジーの1つとして注目されている。主にリソグラフィー技術を応用して作製することにより,自然界に存在しない構成とすることで,色々な光学特性,例えば,メタマテリアルを使っての癌検出や透明マントを達成させることをめざすなど,色々な範囲に関しての研究が行われている。
そこで,今回の特集では,Nanostructured Optics,微細構造をもつ光学系に焦点を当て,最新の技術動向を紹介することを目的として,主に応用物理学会や日本光学会でご活躍の以下の5件の執筆をお願いした。
まず,理化学研究所の田中拓男さんに「光メタマテリアルと赤外分光」と題してご執筆いただいた。
メタマテリアルという人工物質は比透磁率μ を負の値にして,屈折率が負の値とするもので,応用技術の1つとして赤外分光法の高感度化への試みを紹介していただいた。
次に東京農工大学の岩見健太郎さんに「凹から凸まで幅広く切り替わる回転型可変焦点モアレメタレンズ」と題してご執筆いただいた。
メタサーフェスはサブ波長サイズのナノ構造「メタ原子」を配列した位相格子であり,それを応用したレンズ「メタレンズ」を回転型可変焦点レンズである「モアレレンズ」に実装し,凸レンズから凹レンズにわたるまでの幅広い範囲の可変焦点を実現した結果を紹介していただいた。
3番目に静岡大学の小野篤史さんと4名の方に「金属ナノ構造を用いたプラズモニックカラーフィルタリング」と題してご執筆いただいた。
同心円状周期凹凸構造を有する金属薄膜の同心円中心部にサブ波長開口を設けたブルズアイ構造とすることで表面プラズモン共鳴性が高くなり,マルチスペクトルな 波長選択性が得られる。この光透過現象を利用したプラズモニックカラーフィルタリングは,CMOSイメージセンサーの高機能化に貢献する次世代技術とされている。
4番目に堀場製作所の粟根悠介さんと2名の方に「ガス分析適用をめざした電圧変調型バンドパスフィルターの開発」と題してご執筆いただいた。
多重量子井戸(MQW:Multiple Quantum Well)とフォトニック結晶を利用した非分散型赤外吸収(NDIR:Non-dispersive Infrared)システムにおいて,機械式チョッパーと波長選択フィルターの両機能を単一光学素子した電圧変調型狭帯域バンドパスフィルターを作製し,黒体輻射光源と組み合わせて非機械式NDIRガス測定への適用検討の内容と今後の展望を紹介していただいた。
最後に,大阪大学の水谷康弘さんに「回折光学素子の設計評価技術~光線追跡から電磁場解析まで~」と題してご執筆いただいた。
光学シミュレーターが非常に使いやすくなった反面,原理的に存在する誤差や光学モデルの構築法などを忘れさせてしまい,解析誤差を真値と思い込む危険性が潜在的に存在しているとし,あらためて光学シミュレーションの利点や注意点を実施例とともに紹介していただいた。
今回,記事としてご執筆をお願いした5件の技術内容以外にもたいへん多くの「Nanostructured Optics」の研究が行われている。
今後も動向を注目して紹介していきたい。
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