OplusE 2022年1・2月号(第483号)
- 目次
- 特集のポイント
- 広告索引
特集
紫外線と生活・画像
- ■特集にあたって
- 3Dフォーラム 桑山 哲郎
- ■紫外線の生体への影響と紫外線殺菌の利用上の注意
- 東海大学 竹下 秀
- ■モバイル顕微鏡が拓くミクロ世界 可視光と紫外光による蛍光像観察
- Life is small. Projects*,科学コミュニケーション研究所** 永山 國昭*,白根 純人**
- ■紫外線蛍光イメージスキャナーの活用事例
- アイメジャー 一ノ瀬 修一
- ■UV硬化型インキの基礎知識
- 東洋インキ 難波 正敬
- ■紫外線の発見からハードコピー技術へ
- 3Dフォーラム 桑山 哲郎
特別企画
- ■国際画像機器展2021 招待講演
- 日本電気 勝浦 啓太
- ■国際画像機器展2021 招待講演
- カーネギーメロン大学 金出 武雄
連載
- ■【一枚の写真】海鳥目線で捉えた海洋ゴミ汚染
- 国立極地研究所 西澤 文吾
- ■【oe 玉手箱のけむり】その17 量子通信
- 伊賀 健一
- ■【私の発言】光にこだわり,共創共生で地域から世界に発信していきたい
- フォトニックラティス 代表取締役社長 大沼 隼志
- ■新連載【エール―若き画像研究の旗手へ―】第1回 現場に深く根差した佐藤雄隆博士-画像AI研究の「こうありたい」テクノクラート像-
- YYCソリューション/中京大学 輿水 大和
- ■【レンズ光学の泉】第2章 点像 2.3 デフォーカスした点像
- 東京工芸大学 渋谷 眞人
- ■【研究室探訪】vol. 25 東京大学 竹内 渉研究室
- 東京大学 竹内 渉研究室
- ■【国立天文台最前線】第23回 アルマ望遠鏡のデータ処理を通して天文学者たちを支える
- 荒舩 良孝
- ■【ホビーハウス】紫外線関連の商品が書店と100円ショップに続々登場
- 鏡 惟史
- ■【コンピュータイメージフロンティア】『ゴーストバスターズ/アフターライフ』『でっかくなっちゃった赤い子犬 僕はクリフォード』『大怪獣のあとしまつ』ほか
- Dr.SPIDER
- ■【ホログラフィ・アートは世界をめぐる】第25回 Art in Holography 2 ロビン・フッド伝説の郷―ノッティンガムにて
- 石井 勢津子
コラム
■Event Calendar■掲示板
■O plus E News/「光学」予定目次
■書評「紫外線の社会史―見えざる光が照らす日本」
■New Products
■オフサイド
■次号予告
表紙写真説明
この画像は,配達された郵便封筒を紫外線蛍光イメージスキャナーで撮像した画像である。右上の富士山の図柄を含むスタンプは可視光下でも見えるが,紫外線を当てることで黄色に強く光る蛍光インクを使っているようだ。一方,下端には,赤く光るバーコードが印字されている。こちらは紫外線を当てて初めて目に見える不可視(UV)インクを使っている。現在,日本全国で配達されている郵便物には,住所のOCR後,このような不可視インクによるバーコードが印字され,最後の戸別配達に到るまでの効率的な自動配送先類別を実現した。(関連記事「紫外線蛍光イメージスキャナーの活用事例」アイメジャー 一ノ瀬 修一:詳細は34ページ)
特集にあたって3Dフォーラム 桑山 哲郎
紫外線と生活・画像
O plus E 2022 年1・2月号の特集のねらいを,少し長い前置きとともに説明する。通常の特集では,各分野の最先端技術を,ていねいな引用文献とともに解説している。同じ分野の研究者・開発者にとってはたいへん役に立つ内容であると思われる。ところが,専門外の方にとっては,内容が専門的すぎるきらいもあったかと思われる。今回は2022年最初の号ということもあり,日常生活に少しだけ近づけるねらいで,特集の内容を考えた。紫外線を対象とするが,生活上の知識にまで広げると拡散してしまうので,人工的な紫外光源を用いる殺菌から始まり,紫外線に関連する画像機器の利用,像形成までを対象とした。多くの読者にご興味をもっていただければ幸いである。
個別内容の紹介に先立ち,紫外線と健康について,特集の範囲から少しはみ出した分野について触れたい。まず,佐々木政子先生(東海大学名誉教授)の話題から始めたい。O plus E 2011 年9 月号「私の発言」1)にご登場いただいていて,ご経歴ご業績はすぐにお読みいただけるので,紫外線の健康に与える影響と,先生のご業績を先にご紹介する。
南極でのオゾン濃度が異常に減少しているのを発見したのは日本の気象庁所属の忠鉢繁という研究者で,1982年9月,南極の昭和基地での観測結果とされている。検索いただくと,この情報を見つけることができる。オゾンホール減少で地上の到達量が大幅に増加するのはUV-Bで,UV-Aは変化がない。適量のUV-Bを受けることでビタミンD3が体内で作られるのは健康上重要であるので,紫外線とどのように付き合うかが重要になる。詳細は,本文中でも引用されている,佐々木政子編著,竹下 秀・国立環境研究所地球環境研究センター編の著書2)をお読みいただきたいが,1人の人物の展望,強いリーダーシップがすべての人の健康に対してこれほどの貢献をしたことは,広く知られて欲しい事柄である。
なお,この著書執筆に際して参照した文献3),2006年から無償公開されている122ページの著作「絵とデータで読む太陽紫外線―太陽と賢く仲良くつきあう法―」4)は重要な情報で,また環境庁から発行されている最新(2020年)の資料5)まで参照していただければ,日常生活での紫外線対策の参考となる。
さて,本題である今号の特集の解説に入りたい。竹下 秀氏(東海大学)には,「紫外線の生体への影響と紫外線殺菌の利用上の注意」を執筆いただいた。波長253.7 nmのUV-Cを放射する殺菌灯が殺菌には極めて有効である反面,人間と動植物に対しては有害で,照射を避ける必要があることを解説いただいた。なお,波長220 nmの短波長の放射では影響が減ることが,文中では触れていないが図2からわかる。
続いて,「モバイル顕微鏡が拓くミクロ世界 可視光と紫外光による蛍光像観察」を永山國昭,白根純人の両氏(合同会社コミュニケーション研究所)に執筆いただいた。また,一ノ瀬修一氏(アイメジャー(株))には,「紫外線蛍光イメージスキャナーの活用事例」について執筆いただいた。どちらも高解像力で可視光だけでは見つけることができない物を対象としている。紫外領域で昆虫や花,皮膚まで観察した結果報告は数多いが,この場合は紫外線を撮影できるカメラを入手すれば済む(真剣に取り組んでおられる方には申し訳ないが)ので,今回の特集の対象とはしていない。
難波正敬氏(東洋インキ(株))には「UV硬化型インキの基礎知識」を執筆いただき,続いて私から「紫外線の発見からハードコピー技術へ」を解説した。印刷分野や半導体リソグラフィ分野では,紫外線の働きは不可欠であるがその恩恵がほとんど知られていないと思われる。また関連著書の書評,連載「ホビーハウス」も連動企画とした。百科事典を編纂しているわけではないのでお届けできる情報の範囲は限られるが,今回の1冊で紫外線に関わる知識を広め,お役に立たせていただければ幸いである。
OplusE 2022年1・2月号(第483号)掲載広告はこちら