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第26回 イギリスへ再び―レイクフォーレストから羽ばたく―

再び


 T.J(Tung Jeong)によって創設開始されたISDH(国際ディスプレイホログラフィーシンポジウム(詳細は本誌2021年7・8月号)は,彼のカレッジ退職とともに,1997年第6回を最後にレイクフォーレストカレッジでの開催は終了してしまった。約20年もの間続けられたホログラフィー分野のアーティスト,研究者,ビジネスマン,アマチュアファンらが一堂に会する,3年に1度の,オリジナリティ溢れる一大イベントは,それがなくなって改めて,その意味の大きさに関係者らは気づかされた。
 できることなら引き続き新たな場所で再開されることを期待しつつ,最後のレイクフォーレストカレッジでのシンポジウムから3年経ち,6年経っても,Congress, Art in Holography(本誌2021年11・12月号および2022年1・2月号)の続きの企画の便りもなく,夏が来ると,“レイクフォーレストロス”に落ち込んでいる自分に気づかされるのだった。これは筆者だけではなかったようだ。第6回の開催から9年後の2006年7月,英国ノースウェールズで,第7回ISDHの開催がT. Jらが中心となり決まった。開催の知らせを受けたとき,うれしさと同時に,「え? ウエールズってどこだ?」と思わず地図上を探してしまった。英国,グレートブリテン島の西に突き出た半島部に位置し,住民の30%以上がケルト人系のウエールズ語を用いているとあった。聞きなれた都市名は見当たらず,あのビートルズが生まれたリバプールから日帰り観光できるエリアらしいことがわかった。
 そのようなわけで9年ぶりに“友たち(ディスプレイホログラフィー関係仲間)”に再会するため,見ず知らずの開催地へと再びイギリス鉄道の旅が待っていた。イギリスは,最も古い鉄道文化の歴史をもつ。最寄り駅に降り立った時,歴史を感じさせる駅舎の佇まいとモダンなデザインの車両との対比はなかなか面白い光景だった(図1,図2)。ところで,ノースウエールズには世界で一番長い駅名をもつ駅がある。残念ながら私は訪れることはできなかったが,駅名はウエールズ語で,Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch駅。これが一単語とのこと。意味は,「赤い洞窟の聖ティシリオ教会のそばの激しい渦巻きの近くの白いハシバミの森の泉のほとりにある聖マリア教会」だそうだ。そのままずっと使い続けられていることにもビックリである。
 会議の会場近く,主催者側から案内された宿泊先エリアは,市街地からは遠く静かな片田舎といった環境で,いわゆるホテルなどの施設は見当たらない。田園風景の中,街道筋に面した町(村?)の風情を残す家並みに点在する民宿またはペンションといった類であった。宿近くには,唯一,イングリッシュパブ(図3)があるのみで,前日現地に到着した参加者たちは,この唯一のパブで久しぶりの再会を果たしたのだった。ちょうどこの日は2006年サッカーワールドカップ決勝試合の当日で,地元のファンたちはパブリックビュー観戦でこのパブに集まり,試合の一喜一憂の歓声が建物の外まで聞こえてきた。さすが,サッカー発祥の地を名乗るイギリス(実は起源は諸説あるらしいが),自国戦ではなかったがその盛り上がりぶりは大変なものだ。スポーツ音痴の筆者もついつられて決勝戦の行方にハラハラドキドキして大いに楽しんだことが思い出された。 <次ページへ続く>

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