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研究室探訪vol. 21 [東京農工大学 藤田欣也研究室]藤田 欣也 教授

あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,東京農工大学 藤田欣也研究室にお伺いしました。

「ユーザを邪魔しないヒューマンインタフェース」と「器用なバーチャルリアリティ」

 PCやスマートフォンの利用が当たり前になった現在,便利さと引き換えに,過剰な情報がユーザの仕事や日常生活を邪魔する場面も増えている。また,バーチャルリアリティという言葉もすっかり定着したが,VR空間では物を持って置くような単純な操作でも未だ不十分な部分がある。そこで,藤田研究室では,ユーザの邪魔をしないヒューマンインタフェースや,指を使った器用なVR物体操作の実現に向けた様々な研究に取り組んでいる。
藤田 欣也 教授
1988年 慶應義塾大学 理工学研究科博士課程修了 相模工業大学,東北大学,岩手大学を経て 2003年 東京農工大学教授
ヒューマンインタフェースの研究に従事

[研究テーマ1]ユーザの作業状況推定に基づく情報提示制御と遠隔共有

 作業に集中している最中の電話やメール着信通知は,単に不愉快なだけでなく作業者の認知負荷を増大させ,知的生産性を低下させることが知られている。そこで,PCを使用するオフィスワーカを対象に,情報提示に適したタイミングを推定する研究に取り組んでいる。推定の鍵は,アプリケーションの切り替えやウィンドウの増減,さらに頭部運動などに基づく「作業の切れ目」の判定と,PC操作量などの「作業量」であり,これらの情報を統合することによって「今,どの程度割り込んでも良いか」の推定が可能になる。現在は,スマートフォンの併用による推定精度の改善や,作業が一段落するまでの時間の将来予測,推定結果にもとづくメール着信通知タイミングの制御などに取り組んでいる。
 コロナ禍の現在は,テレワーク環境におけるチーム内での会話の促進や連帯感の強化,さらに孤独感の軽減やモチベーション向上に向けて,割り込み拒否度の遠隔共有システムの実運用を通して新たな支援技術の可能性を検討している。


図1 PC作業者の割り込み拒否度推定指標と推定結果

[研究テーマ2]スマートデバイスによる能動的情報提供

 音声で操作するスマートスピーカが発売されて数年が経過したが,音楽鑑賞などの特定用途以外ではあまり使われなくなることが報告されている。そこで,ユーザの行動を邪魔しないタイミングを見計らって,天気予報や電車の運行状況,バーゲン情報等の日常生活に役立つ情報を能動的に提供するスマートデバイスに向けた研究を行っている。受け入れられるためのポイントはユーザの生活行動を邪魔しないことであり,そのために,KINECTなどのセンサ情報やスマートフォンの操作にもとづいて,ユーザの活動が一段落して切り替わるタイミングの検出を試みている。さらに,スマートホームのHUBとしてユーザの代わりに家電やセキュリティ機器を統括管理するインタフェースエージェントの開発にも取り組んでいる。


図2 スマートデバイスによる能動的情報提供のイメージ


[研究テーマ3]指先を使ったVR物体の器用な操作の実現

 ヒトの手はとても器用で,大きさや形状,柔らかさなどが異なる物体を自由自在に操作して,組み立てたり加工したりすることができる。例えば,ヒトは指先で小さな物体を軽く転がしたり,固定された物体をしっかりとつまんで引っ張るなど,多様な操作をすることができる。そこには,手の骨格構造や指先の柔らかさ,さらに神経機構などが複雑にからみあって寄与している。そこで,VR世界でもこのような器用な手を実現すべく,私たちの研究室では手や指の特性を組み込んだVR手モデルを考案するとともに,直感的で効率的な操作を支援するためのアルゴリズム,さらに,ユーザが作業状態を認識する上で重要な反力を適切に提示するためのデバイス開発や反力計算方法の研究などに取り組んでいる。


図3 指先を使った繊細な物体操作が可能なVRシステム


藤田研究室より

 情報工学科の新入生にコンピューターの魅力は何かと聞かれることがある。人それぞれだと思うが,私が考えるコンピューターの魅力は,考えたアイディアをプログラミングするだけで実現してくれるところだと思う。大切なのは,コンピューターがどんなことをしてくれると人が嬉しいか世の役に立つかを考える発想力と,それをどうやって実現するか手段を考える論理力。未来に向かって実現させたい夢をどんどん描き,夢を自分の手で実現してもらいたい。

藤田 欣也 教授

東京農工大学 藤田欣也研究室

住所:〒184-0012 東京都小金井市中町2-24-16
   東京農工大学 小金井キャンパス 10号棟4階
E-mail:kfujita@cc.tuat.ac.jp
URL:http://www.fujitaken.org/

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