研究室探訪vol. 23 [電気通信大学 坂本・松倉研究室]坂本 真樹 教授,松倉 悠 助教
あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,電気通信大学 坂本・松倉研究室にお伺いしました。
このプロジェクトは人間の創造力を増幅するねらいがある。人間がもつ創造力は必ずしもパーフェクトに発揮できているわけではない。AIが人間のかわりに仕事するのではなく,人間の創作活動をサポートを目指している。
研究室では,ブログサービスやプレゼンテーション資料等のデザイン制作支援を目指し,ユーザーの入力テキストの内容に適した色彩推定システムを利用して,118種のフォントと45色の色彩を用いて,テキスト内容に適した色彩,色彩に適した感性評価,そして,感性評価に適したフォントを順に推定するシステムを実装した。これにより,テキスト・色彩・フォントの同時提案を可能とした。今後,データベースの拡充によりシステムの精度を向上させることで,ブログサービスやプレゼンテーション資料等のテキストを伴う制作へのトータルなデザイン支援として応用が期待される。
電気通信大学 西6号館511室(坂本)409室(松倉)
E-mail:maki.sakamoto@uec.ac.jp(坂本)
URL:http://www.sakamoto-lab.hc.uec.ac.jp/
今回は,電気通信大学 坂本・松倉研究室にお伺いしました。
人間の感性を“オノマトペ”から解き明かす感性情報学
電気通信大学 坂本・松倉研究室では,音や様子を文字に移し替えたオノマトペを数値化する研究や色,イメージから言葉を作る人工知能(AI)の研究などを手がけている。また,共通のオノマトペが用いられる異種素材を対象に,画像処理や触覚センサーにより抽出する素材の物理特徴,心理物理実験により抽出する知覚表現,オノマトペ感性評価システムにより定量化する言語データを比較分析する。坂本 真樹 教授
1998年 東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士後期課程博士課程修了 1998年 東京大学助手 2000年 電気通信大学電気通信学部情報通信工学科講師 2003年 電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科講師 2004年 電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科助教授 2007年 電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科准教授 2011年 電気通信大学大学院情報理工学研究科総合情報学専攻准教授 2015年 電気通信大学大学院情報理工学研究科総合情報学専攻教授 2018年 感性AI 株式会社取締役COO 2018年 電気通信大学人工知能先端研究センター副センター長 2020年 電気通信大学副学長(広報担当)
1998年 東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻博士後期課程博士課程修了 1998年 東京大学助手 2000年 電気通信大学電気通信学部情報通信工学科講師 2003年 電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科講師 2004年 電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科助教授 2007年 電気通信大学電気通信学部人間コミュニケーション学科准教授 2011年 電気通信大学大学院情報理工学研究科総合情報学専攻准教授 2015年 電気通信大学大学院情報理工学研究科総合情報学専攻教授 2018年 感性AI 株式会社取締役COO 2018年 電気通信大学人工知能先端研究センター副センター長 2020年 電気通信大学副学長(広報担当)
松倉 悠 助教
2013年 東京農工大学大学院生物システム応用科学府生物システム応用科学専攻博士後期課程修了 2013年 東京農工大学大学院生物システム応用科学部特任助教 2017年 大阪大学大学院基礎工学研究科助教 2021年 電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻助教
嗅覚に関する感覚情報処理,嗅覚ディスプレイの開発と応用に従事
2013年 東京農工大学大学院生物システム応用科学府生物システム応用科学専攻博士後期課程修了 2013年 東京農工大学大学院生物システム応用科学部特任助教 2017年 大阪大学大学院基礎工学研究科助教 2021年 電気通信大学大学院情報理工学研究科情報学専攻助教
嗅覚に関する感覚情報処理,嗅覚ディスプレイの開発と応用に従事
[研究テーマ1]作詞AIによる人の創造力と想像力増幅の試み
自らを地下アイドルと名乗るアイドルグループ「仮面女子」と研究室とがコラボし,仮面女子の人気曲「超☆アドベンチャー」をベースに,メンバーが曲のイメージで描いたイラストをもとに,①色とオノマトペを互いに変換する技術,②色と単語を互いに変換する技術を使って,単語をリスト化し,再帰的ニューラルネットワークなどの文章生成モデルにより作詞した。作詞した言葉が音符に乗らなければならないので,元の歌詞と文字数が同じになるように,生成した言葉をAIがほぼ全自動で当てはめて楽曲が完成した。人口知能「AI仮面」が作詞した楽曲「電☆アドベンチャー」は,2017年4月に記者発表イベントで発表された。このプロジェクトは人間の創造力を増幅するねらいがある。人間がもつ創造力は必ずしもパーフェクトに発揮できているわけではない。AIが人間のかわりに仕事するのではなく,人間の創作活動をサポートを目指している。
[研究テーマ2]テキストのイメージに適した色彩・感性情報・フォントの提案システム
ブログサービスやプレゼンテーション資料等のほとんどの制作物において,色彩やフォントが使用されている。しかしながら,デザインに関する知識がないユーザーにとって,テキストに適切な色彩やフォントを選択することは困難であり,配色やフォントデザインの適切な使い分けの需要が増してきていると考えられる。研究室では,ブログサービスやプレゼンテーション資料等のデザイン制作支援を目指し,ユーザーの入力テキストの内容に適した色彩推定システムを利用して,118種のフォントと45色の色彩を用いて,テキスト内容に適した色彩,色彩に適した感性評価,そして,感性評価に適したフォントを順に推定するシステムを実装した。これにより,テキスト・色彩・フォントの同時提案を可能とした。今後,データベースの拡充によりシステムの精度を向上させることで,ブログサービスやプレゼンテーション資料等のテキストを伴う制作へのトータルなデザイン支援として応用が期待される。
[研究テーマ3]オノマトペを生成するシステムについて
近年,オノマトペを構成する音韻の印象を定量化できることを用いた工学的研究が,人工知能分野で盛んであるが,類似するオノマトペ表現が個々にもつ微細な印象の差異を把握することは難しいとされていた。研究室では,被験者実験で,日本語の音韻を網羅したオノマトペを実験刺激として音韻と印象の結びつきを取得しているため,それらの音韻を組み合わせて生み出される可能性のある,あらゆるオノマトペの意味も推定できるようにした。しかし,それはユーザーが求める直感的で微細な印象に合致するものではないので,ユーザーの入力した印象評価値に適合した音韻と形態をもち,なおかつオノマトペとしての一般的な構造を保った表現を生成するシステムを提案し,オノマトペ印象評価システムと組み合わせることで,表現したい印象に適合し,かつ新奇性のあるオノマトペ表現の創作支援を行える可能性を示した。坂本・松倉研究室より
人間はほかの人間に対して,物に対して,時には痛みなどの感覚など,様々な対象をオノマトペで表現しようと試みる生き物です。そのすべてのオノマトペを把握して,実世界に存在するモノと,人間の頭の中でのモノのイメージについて,人類全体で共通している部分と,個人差がある部分をそれぞれ捉え,それを適切に扱いながら人間に寄り添えるような人工知能を作り出せると,誰もやったことのない新しい研究や挑戦ができるのではないかと思っています。電気通信大学 坂本・松倉研究室
住所:〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘1-5-1電気通信大学 西6号館511室(坂本)409室(松倉)
E-mail:maki.sakamoto@uec.ac.jp(坂本)
URL:http://www.sakamoto-lab.hc.uec.ac.jp/