研究室探訪vol.28 [東海大学 藤川研究室]藤川 知栄美 教授
あの研究室はどんな研究をしているのだろう? そんな疑問に答える“研究室探訪”。
今回は,東海大学 藤川研究室にお伺いしました。
現在,これらの光結合デバイスを1次元ファイバーアレイ,あるいはマルチコアファイバーに適用することを検討中である。図3にマルチコアファイバー端面に試作したマイクロレンズ型光結合デバイスを示す。
これらの光結合デバイスを災害時や地理的に光ファイバーの敷設が困難な地域でのワイヤレス通信ネットワークの候補として注目されている空間光通信に適用することも検討している。マイクロレンズを光ファイバー端面に作製することで,大気揺らぎによる受信光の強度変動の抑制につながると期待している。
自己形成光導波路(SWW):UV硬化樹脂に光ファイバーから出射するUV光を照射することで,「つらら」のように自らの光で成長する光導波路。光ファイバーの端面へSWWを作製する場合,出射光強度が最も強いコア中心部から樹脂が硬化し,硬化部の樹脂の屈折率は未硬化部に比べて高くなる。硬化部と未硬化部の樹脂との屈折率差により光は閉じ込められ,樹脂の硬化部が成長し光導波路が形成される。
東海大学19号館8階(816室)
E-mail:chiemi@tokai.ac.jp
URL:https://www.u-tokai.ac.jp/ud-information-science-and-technology/dpt-information-media-technology/
今回は,東海大学 藤川研究室にお伺いしました。
光テクノロジーを情報通信と3Dディスプレイの研究・開発へと生かす
藤川研究室では,光インターコネクション/空間光通信への適用を目指した光結合デバイスの作製と,臨場感の高い立体像を投影する体積型立体表示システムの,主に2つのテーマに関する研究を行っている。藤川 知栄美 教授
1999年 豊田工業大学大学院工学研究科 博士(工学) 1999年 豊田工業大学PD研究員 2000年 通信総合研究所 特別研究員 2001年 東京工芸大学工学部光学工学科助手 2005年 日本女子大学理学部数物科学科助手 2006年 東海大学工学部光・画像工学科講師 2011年 同准教授 2016年 同教授 2022年 東海大学情報理工学部情報メディア学科教授
1999年 豊田工業大学大学院工学研究科 博士(工学) 1999年 豊田工業大学PD研究員 2000年 通信総合研究所 特別研究員 2001年 東京工芸大学工学部光学工学科助手 2005年 日本女子大学理学部数物科学科助手 2006年 東海大学工学部光・画像工学科講師 2011年 同准教授 2016年 同教授 2022年 東海大学情報理工学部情報メディア学科教授
[研究テーマ1]自己形成導波路技術を用いた光結合デバイス
近年のシリコンフォトニクス(SiPh)デバイスの製造技術の進歩に伴い,SiPhチップとシングルモードファイバー(SMF)との効率的な光結合方法が求められている。当研究室では,SiPhチップ側のスポットサイズ3~4 μmとSMFのスポットサイズ8~10 μmを合わせるスポットサイズ変換デバイスを検討している。三上修 元東海大学教授(現 マレーシア工科大学客員教授)が開発された光ピン技術を応用し, 自己形成光導波路(SWW:Self-Written Waveguide)技術を用いて,ファイバーの先端にさまざまな形状の光結合デバイスを作製しSiPhチップと光ファイバーを結合することを試みている。SiPhチップと光ファイバーそれぞれのスポットサイズに両端の直径を合わせたテーパ型を図1に,先端に微細なレンズを作製したマイクロレンズ型を図2に示す。マイクロレンズ型では,レンズの形状を制御することで,出射ビームの焦点位置,スポット径を制御できるのではないかと期待している。SiPhチップの代用として用いているHiNAファイバーとの結合において,-1 dB程度の結合効率が得られている。図1 テーパ型光結合デバイス | 図2 マイクロレンズ型光結合デバイス |
これらの光結合デバイスを災害時や地理的に光ファイバーの敷設が困難な地域でのワイヤレス通信ネットワークの候補として注目されている空間光通信に適用することも検討している。マイクロレンズを光ファイバー端面に作製することで,大気揺らぎによる受信光の強度変動の抑制につながると期待している。
図3 マルチコアファイバー端面に試作したマイクロレンズ型光結合デバイス
自己形成光導波路(SWW):UV硬化樹脂に光ファイバーから出射するUV光を照射することで,「つらら」のように自らの光で成長する光導波路。光ファイバーの端面へSWWを作製する場合,出射光強度が最も強いコア中心部から樹脂が硬化し,硬化部の樹脂の屈折率は未硬化部に比べて高くなる。硬化部と未硬化部の樹脂との屈折率差により光は閉じ込められ,樹脂の硬化部が成長し光導波路が形成される。
[研究テーマ2]螺旋状回転スクリーンを用いた体積型立体表示システム
立体表示方式にはさまざまな方式があるが,左右両眼に異なる平面像を提供する2眼ステレオ方式と, 3次元空間に立体像を形成する体積型立体表示方式に大別できる。体積型立体表示方式には,発光点を3次元空間に形成する方式と, 3次元空間を掃引する高速移動スクリーンに像を投影する方式がある。当研究室では,面谷信 元東海大学教授(現 東京電機大学特任教授)とともに試作/開発した,螺旋状回転スクリーンに断面像を照射する表示方式について,実用化の可能性を検討している。螺旋滑り台状の回転スクリーンに軸方向上部から断面像を照射する螺旋スクリーン型(図4)は,円柱形の立体表示領域を提供し,小型の回転台であっても比較的大きな表示領域を有する。実際の投影像を図5に示す。応用分野としては,エンターテインメント系と実用系がある。例えば,テーマパークで入場者を驚かすしかけや,人体の各パーツをイメージしやすいように立体表示する医学教育に使用するなど,さまざまな用途が考えられる。実用化に向けてさらなる課題を解決していく。
図4 螺旋状回転スクリーンを用いた立体画像表示システム
図5 螺旋状回転スクリーンに投影した立体像
藤川研究室より
一見まったく別の分野に思われがちな光通信用デバイスと立体ディスプレイに関する研究を行っています。マルチタスクは苦手なこともあり時間配分に苦労していますが,それぞれの研究テーマに日々邁進している研究室の学生さんから多くの刺激を受けています。何事もチャンスにするかしないかは自分次第。異なるテーマの研究でも思わぬところに共通点があるのは興味深いですし,別の視点から自身の研究テーマを考えることは成果につながると信じています。東海大学 藤川研究室
住所:〒259-1292 神奈川県平塚市北金目4-1-1東海大学19号館8階(816室)
E-mail:chiemi@tokai.ac.jp
URL:https://www.u-tokai.ac.jp/ud-information-science-and-technology/dpt-information-media-technology/