安価で操作性向上を実現する高性能色素の開発に成功東京工業大学,山口大学
二光子励起蛍光顕微鏡は,生体組織の深部を観察するのに最も優れた性能を有しているが,蛍光プローブと光源の性能・種類に限りがあったため,観察能力の限界とコスト面の問題があり,実用化が足踏み状態だった。
今回開発した色素は,多環式芳香族化合物であるピレンに電子受容性基(アクセプター)を導入した分子で,「生体光学窓」と呼ばれる生体組織の光透過性のよい波長領域(650~1100nm)で強く光を吸収(色素を励起)し,高効率で発光する。イメージングに用いると,従来の汎用色素と比べて20倍以上の感度が得られた。また,従来不可能だった,波長1050nmのファイバーレーザーを使用でき,現行のチタンサファイアレーザーを用いるシステムと比べて操作性が向上し,コストが削減できる。
今後,二光子励起蛍光顕微鏡の医療現場での実用化を大きく加速させると期待されている。