赤外分光計測の飛躍的な感度向上に成功岡山大学,理化学研究所
従来の赤外分光計測では,明るい背景光の中から試料が光を吸収した際のわずかな光強度の低下を検出していたため,信号の弱い極微量試料の測定が困難だった。今回開発した赤外分光計測技術は,入った光をどこにも逃さず吸収する光吸収メタマテリアルによって,光計測において有利な環境である暗闇を人工的に作り出し,さらに試料と光吸収メタマテリアルとの相互作用により漏れ出してくる光を高感度に検出することを可能にする。メタマテリアル構造を最適化して背景光をさらに抑えることで,ゼプト(10-21)モルレベルのさらなる高感度化も期待されている。
今後,多種多様な分子を検出できるマルチチャネル化を含め,高付加価値・使い捨て赤外分光センサチップとして開発が進めば,温室効果ガスや有害ガスを計測する環境モニタリングや特定疾患と因果関係がある呼気中のガス成分を分析する呼気診断などに貢献することが期待される。また,今回開発した光吸収メタマテリアルは,赤外分光法に限らず,他の光計測技術における邪魔な光の除去にも応用可能であり,さまざまな光学機器の高性能化に貢献すると期待されている。