室温で発光する円偏光スピンLEDの創製に成功 ―多分野への応用が期待される光源の登場―東京工業大学 研究グループ
これまで円偏光のらせんの回転方向を司る電子の自転軸の向きをすべて揃えるための原理開拓と,素子中の半導体と磁性体金属の接合で生じる非磁性物質の生成をなくす作製法の開拓が室温円偏光実現の最大課題と考えられてきた。今回,研究グループが独自で開発した「結晶性アルミナ中間層」によって,大電流を流していても接合面での化学変化を抑えこむことに成功した。これによって,大電流下の発光で円偏光が増幅される現象を発見することができた。それにより,この新たなスピンLEDは,電流が小さいと偏光は起きないが,電流を大きくすると発光強度とともに円偏光の純度が上がる。
現状で素子中の結晶性アルミナ中間層は大電流通電状態で1週間程度の耐久性しかない。今後は,その品質をさらに向上させるとともに,円偏光を発する超小型レーザーの実現を目指していく。その過程で,今回判明した円偏光が増幅する原理が解き明かされる可能性がある。
地球上のあらゆる生物を構成する分子は光学活性があるので,円偏光を利用すれば,これまで観察困難だった生命活動を詳細に観察できるようになるかもしれない。ま た,円偏光を使った暗号通信への応用も期待される。