雷の原子核反応を陽電子と中性子で解明京都大学,東京大学,理化学研究所,日本原子力研究開発機構,北海道大学 研究グル ープ
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京都大学,東京大学,理化学研究所,日本原子力研究開発機構,北海道大学の研究グル ープは,雷が大気中で原子核反応(光核反応)を起こすことを突き止めたと発表した。本研究では,地上に放射線検出器を設置し,2017年2月6日に新潟県柏崎市で発生した雷から,強烈なガンマ線のバースト放射を検出した。さらに,35秒ほど遅れて,雷を起こした雲が検出器の上空を通過する際に,陽電子(電子の反物質)からの0.511 MeV対消滅ガンマ線の検出に成功した。これらは,雷に伴うガンマ線が大気中の窒素と光核反応を起こした結果生じる,「中性子」と「窒素の放射性同位体が放出した陽電子」が起源と考えられ,理論的に予言されていた「雷による光核反応」の明確な証拠が得られた。つまり検出された「ショートバースト」と「対消滅ガンマ線」は,雷が「原子核」との光核反応を起こした明確な観測的証拠といえる。今後の雷の研究に「原子核」の視点が入ることで,陽電子や中性子による観測手法の開拓が期待できる。また,今回の結果は雷を引き起こす「きっかけ」を解明する長い物語のマイルストーンになると言える。
今回,雷で反物質(陽電子)が生成され,我々の上空をこっそり通過しているという,自然の隠れた姿が明らかになった。さらに,炭素,窒素,酸素の同位体(13C,14C, 13N, 15N, 15O)などが,雷の光核反応でも生成されている事実も重要である。年代測定に利用される炭素同位体 14Cは宇宙線によって,安定な同位体13Cは星の内部で作られたと考えられているが,今回の研究で雷も同位体13Cや14Cを作ることが明らかになった。年代測定へどの程度影響するのかは重要な研究課題になるであろう。