光超音波トモグラフィで皮膚の精細な3D血管地図の作成に成功京都大学 研究グループ
がんの切除後に組織の欠損が生じた場合,体の別の部位から血管を付けた状態で皮膚や皮下脂肪を採取し,欠損部の近くにある血管と吻合させることによって組織を移植する手術が行われる。これを「遊離皮弁移植術」という。太ももの皮膚はしなやかで,また採取による後遺症もほとんどないため,近年ではよく移植ドナーとして用いられている。顔や手などの形を精巧に再現しようとすればより薄い皮弁注が必要となるが,薄くすればするほど血管が損傷されるリスクが高くなるため,経験の豊富な医師でも危険性の高い手術であった。
本研究では「光超音波トモグラフィ技術」を用いて太ももの撮影を行い,超音波やMRIでは描出できない細かい血管のネットワークを描き出すことができた。さらに,深さごとに色分けを行うことによって,3次元の情報を含んだ血管地図を作ることに成功した。光超音波トモグラフィは,血管に光エネルギーを与えることにより発生した超音波を探知して,血管を映像化する新しい撮影技術で,撮影に造影剤を用いないために極めて安全に検査をすることができる。本研究は,光超音波トモグラフィが移植治療における術前評価法として有用であることを示し,より優れたがん治療法の創出にもつながると期待されている。