ベクトル放射光ビームの生成に成功広島大学,名古屋大学,自然科学研究機構分子科学研究所 研究グループ
ベクトルビームというのは,光ビーム内の偏光の方向が一定の規則に従って空間的に変化する特殊な光である。このような空間的な構造を持つ光は,可視光より長い波長の光ではレーザーと特殊な光学素子を使うことにより,発生技術が確立され,顕微鏡,ナノテクノロジー,情報通信技術などへの応用を目指して活発に研究されてきた。なかでも,超高解像度の顕微鏡への応用が2014年のノーベル化学賞の受賞対象となったことはよく知られている。
同グループは,放射光源を用いて,可視光よりも波長が短い紫外線やX線で空間的な構造を持つ光を作り出す研究に取り組んできた。研究では,アンジュレータと呼ばれる強力な放射光を発生する装置を2台用いて2つの放射光ビームを合成するという新しい着想により,波長を自由に変えられる強力なベクトル放射光ビームを生成することに成功した。
今回の成果を応用することで強力なベクトルビームを紫外線やX線の波長領域で生成できるようになり,物質科学や生命科学研究における新たな研究手法の開発に結び付くことが期待される。