ホロー原子を使ったX線レーザーの短パルス化-X線の時間幅を制御する非線形光学素子を実現-理化学研究所,高輝度光科学研究センター,電気通信大学
本研究成果は,X線領域における初めての実用的な非線形光学素子の実現を示すものであり,XFELのパルス幅の自在な制御やアト秒(10-18秒,100京分の1秒)X線光源の開発への応用が期待できる。
今回,同グループは,集光したX線パルスを厚さ10 μmの銅の薄膜に照射することで,パルスの前半部分で銅の原子をホロー原子へと変化させ,パルスの後半部分ではホロー原子を通過する状況を作り出した。通常の原子とホロー原子とではX線の吸収のされ方が大きく異なるため,銅の薄膜を通過後のX線のパルス幅は通過前のパルス幅よりも短くなることが期待される。実際に,通過前後のX線のパルス幅をそれぞれ計測した結果,通過後のパルス幅が約35%短縮されていることを確認した。さらに,シミュレーションにより,薄膜の厚みやX線強度を変えることで,XFELのパルス幅を自在に制御できることを示した。