光合成を止めた藻類の100年の謎解く全ゲノム解読に成功京都大学,筑波大学,国立科学博物館,国立遺伝学研究所
光合成は光エネルギーを利用して生きていくことができるため便利だろうと考えられているが,実際には進化の過程で光合成を止めた「元」植物や「元」藻類が数多く生息している。また,それらの多くは光合成をしない葉緑体を維持したままである。この種は光合成をしないかわりに環境中に溶存する栄養分を吸収して生育しているが,その詳細なメカニズムはわかっていなかった。本研究では全ゲノム解読に加え,機能している遺伝子を網羅的に検出するトランスクリプトーム解析や生化学実験などを用いた多角的な研究により,本種が光合成を止めた後も葉緑体での物質生産を維持しつつ,周りの養分を効率よく獲得するための能力を増大させていることが明らかとなった。これは一般的な植物や藻類とも,そして,動物とも異なる能力をもつことを意味する。光合成を止めた本種の全ゲノム解読は地球上で起きてきた生物進化の一面を解き明かすとともに,生物にとって光合成とは何かをひも解く鍵となることが期待される。