がん治療用新型イオン入射装置の原型機が完成 ~重粒子加速器の小型化をレーザー技術で目指す~量子科学技術研究開発機構,住友重機械工業,日立造船
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量子科学技術研究開発機構(QST)などのグループは,レーザー・プラズマ加速を用いたレーザー駆動イオン入射装置の原型機を世界で初めて開発し,小型重粒子がん治療装置“量子メス”の実現に向けた統合試験を開始した。
重粒子線がん治療では、身体深部のがん細胞に炭素イオンを照射して死滅させる。そのため炭素イオンを光速の約73 %まで加速する必要があるが、大規模な加速装置などが必要で普及が進まなかった。そこでQSTでは、既存装置を約1/40(面積比)に小型化する“量子メス”と呼ばれる次世代重粒子線がん治療装置の開発を産官学連携で進めている。量子メスに導入される2大技術の1つ,超伝導技術を利用したシンクロトロンはすでに実証機製作段階にあり,もう1つの技術,レーザー・プラズマ加速を用いた新型イオン入射装置の開発も進めている。今回、連携企業等との共同で「レーザー装置」「イオン加速部分」「イオン輸送部分」の3つの要素を統合し、レーザー駆動イオン入射装置の原型機を完成した。量子メス開発はいよいよ最終設計に向かう。