レーザー光によるイオンビーム発生で世界最高速度～粒子線がん治療装置の「量子メス」～量子科学技術研究開発機構，ドレスデンヘルムホルツ研究所，英国インペリアルカレッジロンドン
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量子科学技術研究開発機構などのグループは、ドレスデンヘルムホルツ研究所（HZDR）の施設「Dracoレーザー」を用い、四半世紀超えられなかったレーザーによるイオン加速の世界最高到達速度（光速の約40%、運動エネルギーで100MeV）を更新、光速の50%(運動エネルギーで150MeV)のイオンビーム（陽子）発生に成功した。
粒子線がん治療は、体外から体内深部のがん細胞に高速の陽子などのイオンビームを照射、がん細胞を死滅させる。治療装置には大規模な加速器と専用の建物が必要で、粒子線がん治療装置の普及を妨げる要因とされる。
本研究グループは、これまでイオンを効率的に加速する多段階の加速手法を提唱していたが、今回その実証実験を小型レーザーであるDracoレーザーを用いて行った。レーザー光の条件（時間波形）を最適化することで多段階のイオン加速を実現した結果、世界最高速度に当たる光速の50%のイオンビームを、～20ミクロンメートル程度の領域で発生させることに初めて成功した。
粒子線がん治療には陽子で光速の約55%が必要だが、今回その90%に達し、あと一歩まで近づいた。既存の加速器不要で、超小型のレーザー駆動・粒子線がん治療装置実現が期待される。
