レンズレス顕微鏡による光の吸収分布取得を1回の計測で実現東北大学
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レンズ不使用で高分解能な観察が可能な顕微手法「コヒーレント回折イメージング」。本法は高性能レンズの作製が難しいX線領域で有用で、レンズ性能を超える分解能で材料内部の化学状態を観察できる。しかし、化学状態の観察のために必要な試料による光の吸収分布を表す像(振幅像)を得るには複数回の計測が必要で、動的な化学反応の観察への応用を妨げていた。
東北大学のグループは、コヒーレント回折イメージングにおいて1回の計測で振幅像の取得が可能な新たな解析手法を開発した。この手法は、従来手法でも1回の計測で得ることができた光波の進み(または遅れ)具合の分布を表す像(位相像)が振幅像と類似した構造を示すことに着目、その構造類似性を振幅像の取得に活用する。これにより、高分解能(約30nm)の達成だけでなく、従来法と同等精度の振幅像を60分の1以下の計測時間で取得することに成功した。
本手法は、電池や触媒の内部で生じる化学反応のリアルタイム観察を可能にし、材料の性能劣化メカニズムの解明や新材料開発の加速など、様々な分野で応用されると期待される。