革新的な水分解光触媒システムを開発,実用化に大きな前進名古屋大学,信州大学,東京大学,山東大学
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名古屋大学などのグループは、高効率かつ実用的な水分解光触媒反応システムを開発した。
太陽光と光触媒を利用した水分解反応は、持続可能なグリーン水素製造技術として大きく期待されている。一方、従来技術には、光触媒の反応効率の低さ、水素と酸素が混在することによる逆反応、および生成ガスの分離の必要性などの課題があり、実用化の大きな障壁であった。
今回、水素発生セルと酸素発生セルを独立させた設計により、水素と酸素を分離して生成する新たな光触媒システムを開発。水素発生用セルにはセレン化モリブデン(MOSe2)をコーティングしたハロゲン化ペロブスカイト光触媒を、酸素発生セルにはニッケル-鉄層状複水酸化物をコーティングしたバナジン酸ビスマスを導入した。これらのセル間の電子移動を、I3-/ I-電子伝達材を介して促進せることで、太陽光エネルギー変換効率(STH)2.47%を実現した。さらに、このシステムをスケールアップした692.5 cm2の屋外実験システムでは、平均1.21%のSTHを1週間維持した。
今回開発のシステムは、独自設計により、水素と酸素の分離生成だけでなく、逆反応の抑制で、従来システムと比較してSTHを大幅に上昇させることに成功した。本研究の成果は、光触媒を用いた水素製造技術の発展に新たな指針を示し、今後の大規模な水素生産への応用が期待される。