世界初,光渦の輻射力が創るシリコンニードルとその形成過程の可視化に成功千葉大学 尾松 孝茂
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光渦とは螺旋状波面に由来する円環状強度分布と円環の周回方向輻射力(軌道角運動量)を持つ光波の総称である。われわれは,単結晶シリコン基板へパルス幅20psの近赤外光渦(波長1.06μm)を照射すると,基板表面に高さ10μmを超える単結晶性シリコンニードルが形成されることを発見した。また,ニードルの形成過程を高速度カメラによって可視化することに成功した(図1)。
単結晶性シリコンニードルの形成過程を以下に概説する。まず,シリコンが照射した光渦の強度分布に従って円環状に融解する。融解したシリコンは円環の中心(暗点)に向かって質量移動し,ニードルとして堆積する。同時に余剰なシリコンは液滴として直線的に指向性良くニードルの先端から飛翔し,ニードルが完成する。
驚くべきことに,光渦照射からニードルができるまでに~1μsもの長い時間を要する。すなわち,パルス幅がわずか20psの光渦の強度分布や輻射力を融解したシリコンがあたかも記憶していて,~1μsの長い時間を経て再結晶化しニードルを形成するのである。光渦でないガウスビームを照射しても溶融したシリコンは一瞬にして飛散してしまい,単結晶性の構造体は決してできない。
また,シリコン液滴の直線的な飛翔はシリコン液滴が自転運動していることを示唆し,光渦の軌道角運動量がニードル形成に重要な役割を果たしていることが分かる。実際,軌道角運動量を持たない単なる円環ビームを照射しても,シリコン液滴の直線的飛翔や効率よいニードル形成は決して起こらない。
光渦が創る単結晶性シリコンニードルは数多くの分野で応用が期待できる。例えば,コアシェル型デバイスなどのシリコンフォトニクス,人体に対する侵襲性が少ない無痛針などの医療MEMSなどが考えられる。また,飛翔するシリコン液滴は表面張力により球体をしているので微小球フォトニクスデバイスの創成にもつながる。
さらに,シリコン液滴の飛翔運動を利用することでプリンタブルなデバイス創成技術へ展開することもできる。
L. Allenが光の軌道角運動量の存在を提唱してから20年以上の年月が流れた。しかしながら,光渦を積極的に物質科学に応用した研究はいまだ数少ない。われわれの研究成果がきっかけとなり光渦による新奇光科学・光技術が続々と登場することを期待したい。
単結晶性シリコンニードルの形成過程を以下に概説する。まず,シリコンが照射した光渦の強度分布に従って円環状に融解する。融解したシリコンは円環の中心(暗点)に向かって質量移動し,ニードルとして堆積する。同時に余剰なシリコンは液滴として直線的に指向性良くニードルの先端から飛翔し,ニードルが完成する。
驚くべきことに,光渦照射からニードルができるまでに~1μsもの長い時間を要する。すなわち,パルス幅がわずか20psの光渦の強度分布や輻射力を融解したシリコンがあたかも記憶していて,~1μsの長い時間を経て再結晶化しニードルを形成するのである。光渦でないガウスビームを照射しても溶融したシリコンは一瞬にして飛散してしまい,単結晶性の構造体は決してできない。
また,シリコン液滴の直線的な飛翔はシリコン液滴が自転運動していることを示唆し,光渦の軌道角運動量がニードル形成に重要な役割を果たしていることが分かる。実際,軌道角運動量を持たない単なる円環ビームを照射しても,シリコン液滴の直線的飛翔や効率よいニードル形成は決して起こらない。
光渦が創る単結晶性シリコンニードルは数多くの分野で応用が期待できる。例えば,コアシェル型デバイスなどのシリコンフォトニクス,人体に対する侵襲性が少ない無痛針などの医療MEMSなどが考えられる。また,飛翔するシリコン液滴は表面張力により球体をしているので微小球フォトニクスデバイスの創成にもつながる。
さらに,シリコン液滴の飛翔運動を利用することでプリンタブルなデバイス創成技術へ展開することもできる。
L. Allenが光の軌道角運動量の存在を提唱してから20年以上の年月が流れた。しかしながら,光渦を積極的に物質科学に応用した研究はいまだ数少ない。われわれの研究成果がきっかけとなり光渦による新奇光科学・光技術が続々と登場することを期待したい。