地球に似た軌道を持つ惑星の誕生現場をアルマ望遠鏡が捉えた自然科学研究機構国立天文台 平松 正顕
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南米チリの高地に建設されたアルマ望遠鏡が観測を開始してから,5年が過ぎた。私たちが住む太陽系の天体から,今まさに生まれつつある星や惑星,そして100億光年以上かなたで爆発的に星を作る銀河など,数多くの天体についてこれまでとはまったく異なる姿をアルマ望遠鏡は描き出してくれている。今回取り上げる,うみへび座TW星を取り巻く塵の円盤の画像も,人類が初めて目にする惑星誕生現場の超高精細画像といえる。
私たちを日々照らしてくれる太陽も,そして私たちが住む地球も,およそ46億年前にガスと塵の雲の中で作られたと考えられている。雲の中でガスや塵が自らの重力で集積することで星が生まれ,取り残された物質が星の周囲を円盤状に取り囲み,そこでまた物質が集積することで惑星が生まれた,というシナリオを天文学者は構築してきた。しかし,シナリオの細部はまだまだ詰めるべきところがある。星や惑星の材料となる極低温(およそマイナス260℃)のガスや塵は可視光・赤外線をほとんど出さないために一般的な望遠鏡では観測が難しいが,そうした低温の物質からも放たれる電波を観測できるアルマ望遠鏡は,星惑星形成のシナリオを確立させることができると期待されている。
ここでご紹介する画像は,誕生後約1000万年の若い星,うみへび座TW星を取り巻く塵の円盤をアルマ望遠鏡が捉えたものだ。うみへび座TW星は地球から175光年の距離にあり,円盤を持つ若い星としては私たちに最も近い。しかも,円盤を真正面から見ることができる位置関係になっているため,惑星誕生現場をつぶさに観測できる対象として天文学者が注目してきた天体だ。観測画像には,明瞭な暗い隙間が2本,同心円状に見えている。この隙間は,太陽系で言えば天王星や冥王星の軌道に相当する大きさだ。そしてこの画像で最も驚くべきことは,その中心星のすぐ近くにもう1本の暗いリング状の隙間が存在していることだ。この隙間の半径は,地球の公転半径とほぼ同じ。こうした隙間がどのようなメカニズムでできたかについては諸説あるが,一つの可能性として,すでにこの隙間の中で惑星が誕生していて,惑星が公転している間にその軌道上の塵を取りこんだり散逸させたりして塵が減少している,という考え方がある。もしこの説が正しいとすれば,うみへび座TW星の周囲には,地球と似た軌道を持つ惑星が作られつつあるのかもしれない。地球のような星は宇宙でありふれた存在なのか,そこに生命が宿る可能性はあるのか。尽きない謎にアルマ望遠鏡は高精細画像で迫っているが,その画像がまた謎を生む。惑星誕生のプロセスに関する研究は,今まさに現在進行形で大きく進みつつあるのだ。
私たちを日々照らしてくれる太陽も,そして私たちが住む地球も,およそ46億年前にガスと塵の雲の中で作られたと考えられている。雲の中でガスや塵が自らの重力で集積することで星が生まれ,取り残された物質が星の周囲を円盤状に取り囲み,そこでまた物質が集積することで惑星が生まれた,というシナリオを天文学者は構築してきた。しかし,シナリオの細部はまだまだ詰めるべきところがある。星や惑星の材料となる極低温(およそマイナス260℃)のガスや塵は可視光・赤外線をほとんど出さないために一般的な望遠鏡では観測が難しいが,そうした低温の物質からも放たれる電波を観測できるアルマ望遠鏡は,星惑星形成のシナリオを確立させることができると期待されている。
ここでご紹介する画像は,誕生後約1000万年の若い星,うみへび座TW星を取り巻く塵の円盤をアルマ望遠鏡が捉えたものだ。うみへび座TW星は地球から175光年の距離にあり,円盤を持つ若い星としては私たちに最も近い。しかも,円盤を真正面から見ることができる位置関係になっているため,惑星誕生現場をつぶさに観測できる対象として天文学者が注目してきた天体だ。観測画像には,明瞭な暗い隙間が2本,同心円状に見えている。この隙間は,太陽系で言えば天王星や冥王星の軌道に相当する大きさだ。そしてこの画像で最も驚くべきことは,その中心星のすぐ近くにもう1本の暗いリング状の隙間が存在していることだ。この隙間の半径は,地球の公転半径とほぼ同じ。こうした隙間がどのようなメカニズムでできたかについては諸説あるが,一つの可能性として,すでにこの隙間の中で惑星が誕生していて,惑星が公転している間にその軌道上の塵を取りこんだり散逸させたりして塵が減少している,という考え方がある。もしこの説が正しいとすれば,うみへび座TW星の周囲には,地球と似た軌道を持つ惑星が作られつつあるのかもしれない。地球のような星は宇宙でありふれた存在なのか,そこに生命が宿る可能性はあるのか。尽きない謎にアルマ望遠鏡は高精細画像で迫っているが,その画像がまた謎を生む。惑星誕生のプロセスに関する研究は,今まさに現在進行形で大きく進みつつあるのだ。