深紫外LEDの高出力化をナノ光構により実現国立研究開発法人 情報通信研究機構 未来ICT研究所 井上 振一郎
- 説明文
- 写真
深紫外波長帯(200~300nm)で発光する半導体発光ダイオード(LED)は,塩素などの有害な薬剤を用いない光のみによるウイルスの殺菌・無害化や水銀ランプの代替などが期待され,近年注目を集めている。水銀フリーかつ小型で手軽に機器に取り付けることができるため,医療から浄水,環境,ICT分野まで幅広い分野の産業,生活,社会インフラに対して画期的な技術革新をもたらす可能性をもっている。
このような背景の下,水銀フリー,低環境負荷で小型,高出力な深紫外LEDの開発が強く望まれており,窒化物系半導体(AlGaN:窒化アルミニウムガリウム)を用いた深紫外LEDの開発が世界的に活発化している。しかし,深紫外LEDの光取り出し効率は極めて低く,発熱や光出力飽和現象などの問題が顕在化することから,これまで高出力化が難しく,それらの課題を解決する新しい技術の開発が求められていた。
そこでわれわれは,窒化アルミニウム(AlN)基板上深紫外LEDに対するナノインプリント技術を新たに開発することで,LEDチップ全面に理論的に最適化された光取り出し特性と放熱特性を同時に向上させる,図1に示すAlNナノ光・ナノフィン構造を高精度,高均一に形成した。従来型LED素子(フラット表面)では,注入電流の増加に伴い,光出力も外部量子効率も低下してしまう現象(ドループ)が見られたが,今回新たに開発したナノ光・ナノフィン構造を形成した図2に示す深紫外LEDでは,注入電流の増加に対し,光出力が線形に近い状態で増加した。高注入電流時の外部量子効率の低下も少なく抑えられ,最大注入電流時(@850mA)において約20倍という大幅な光出力の向上を実現した。図3にそれぞれ,従来型と新規開発素子のファーフィールド像を示す。この結果,室温・連続駆動下,シングルチップ(チップサイズ:1mm2,電極メサ面積:0.35mm2),発光波長265nmの深紫外LEDにおいて,深紫外波長帯 世界最高出力となる光出力150mW超を達成した。
本成果は,ナノ構造を駆使して光出力を大幅に向上させる技術でありながら,ナノインプリント技術を用いることで,従来の電子ビーム描画等の加工法を用いる場合と比較すると,圧倒的な製造時のコスト低減を可能にする手法である。今回,深紫外波長域において世界最高となる150mW超の実用水準を超える小型,高出力な深紫外LEDを実証したことにより,殺菌から医療,環境,工業,ICT分野に至るまで広範囲にわたる応用分野への深紫外LEDの適用,その普及への加速が期待される。
このような背景の下,水銀フリー,低環境負荷で小型,高出力な深紫外LEDの開発が強く望まれており,窒化物系半導体(AlGaN:窒化アルミニウムガリウム)を用いた深紫外LEDの開発が世界的に活発化している。しかし,深紫外LEDの光取り出し効率は極めて低く,発熱や光出力飽和現象などの問題が顕在化することから,これまで高出力化が難しく,それらの課題を解決する新しい技術の開発が求められていた。
そこでわれわれは,窒化アルミニウム(AlN)基板上深紫外LEDに対するナノインプリント技術を新たに開発することで,LEDチップ全面に理論的に最適化された光取り出し特性と放熱特性を同時に向上させる,図1に示すAlNナノ光・ナノフィン構造を高精度,高均一に形成した。従来型LED素子(フラット表面)では,注入電流の増加に伴い,光出力も外部量子効率も低下してしまう現象(ドループ)が見られたが,今回新たに開発したナノ光・ナノフィン構造を形成した図2に示す深紫外LEDでは,注入電流の増加に対し,光出力が線形に近い状態で増加した。高注入電流時の外部量子効率の低下も少なく抑えられ,最大注入電流時(@850mA)において約20倍という大幅な光出力の向上を実現した。図3にそれぞれ,従来型と新規開発素子のファーフィールド像を示す。この結果,室温・連続駆動下,シングルチップ(チップサイズ:1mm2,電極メサ面積:0.35mm2),発光波長265nmの深紫外LEDにおいて,深紫外波長帯 世界最高出力となる光出力150mW超を達成した。
本成果は,ナノ構造を駆使して光出力を大幅に向上させる技術でありながら,ナノインプリント技術を用いることで,従来の電子ビーム描画等の加工法を用いる場合と比較すると,圧倒的な製造時のコスト低減を可能にする手法である。今回,深紫外波長域において世界最高となる150mW超の実用水準を超える小型,高出力な深紫外LEDを実証したことにより,殺菌から医療,環境,工業,ICT分野に至るまで広範囲にわたる応用分野への深紫外LEDの適用,その普及への加速が期待される。