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スプレー塗布で作るフレキシブル圧電デバイス熊本大学 中妻 啓

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 我々はスプレー塗布によって作製することができ,薄くフレキシブルで高温でも動作する圧電デバイスを開発している。圧電デバイスは力や振動といった機械的エネルギーと電気的エネルギーを相互に変換する作用をもつ。その用途は幅広く,力センサーや振動センサーといった受動的なセンサーのほか,超音波を発振・受振する素子(超音波トランスデューサー)として使ったり振動発電用の素子として使ったりすることができる。
 我々が開発するデバイスはゾルゲル複合体による薄膜積層型圧電デバイスで,ゾルゲル溶液と圧電セラミック粉体の混合物をスプレー塗布して数十~100 μm程度の圧電膜を製膜する(ゾルゲルスプレー法)。粉体を混合した塗液を噴霧することで,クラックの生じにくい多孔質膜が形成される。これにより,耐熱衝撃性や柔軟性といった特長がもたらされ,高温下での長期動作を可能にする。また,多孔質膜は膜内を伝搬する弾性波を減衰させるため,バッキング材なしで超音波パルスエコー試験を実施できたり,振動や圧力を高SN比で取得できるといった利点ももつ。さらにスプレー塗布工程を採用することで非可展面を含む自由曲面形状のデバイスを容易に作製できる。
 我々の現在の主なターゲットの1つは高温非破壊検査である。デバイスの耐熱衝撃性や高温用材料を用いた製膜が比較的簡単である点,柔軟で薄いため曲面適合性が高い点を活用し,プラントなどの高温配管や構造物を長期的かつオンラインで超音波モニタリングを行うデバイスの実証を進めており,すでに1000℃程度で動作することも確認している。
 また,柔軟で動作温度範囲が広く,取得する信号のSN比も良好であることから,ウェアラブルセンサーあるいは椅子などへ埋め込み脈波や体動等を取得する生体信号センサーとしての応用展開も進めている。さらに,曲面デバイスを塗装と同じように作製できることから,さまざまな形状をもつボトルなどの把持状態の可視化センサーやロボット表面に加わる力の分布を取得するロボットスキンセンサーなどへ適用するための技術開発も行っているほか,この技術を社会実装するための事業化プロジェクトも進行中である。

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OplusE 2019年5・6月号(第467号)

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