光でつけ外しできる可逆接着剤産業技術総合研究所 伊藤 祥太郎
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接着技術は家庭と産業の両方で広く利用されているが,一般に強固な接着を目的とすることから,使用後の接合部の解体が難しく,材料リサイクルの観点で課題がある。この課題に対して,外部から加熱などの刺激を与えて接着力を低下させ,使用後の接合部の解体を可能とする解体性接着剤が提案されている。解体性接着剤が広く利用されるためには,使用環境や目的に応じて様々な様式の解体刺激を自在に選択できることが必要であると考えられる。しかし,現時点では加熱や通電,熱水浸漬などの方法に限られており,比較的厳しい条件の解体方法が多いことが課題となっている。
産業技術総合研究所では,光照射により非加熱で液化―固化を繰り返す材料(図1)を開発し,着脱可能な接着剤への応用を行ってきた。本材料は,光照射により構造が変化する色素を利用しており,色素の構造変化により材料の硬さも変化する。適切な分子構造を採用すると,通常では固体状態で,紫外光を当てると軟化(液化)し(図2),可視光を当てると再び固体に戻すことができる。
この固液相転移現象を接着剤に利用すると,固体状態では基材を固着させ接着力を発揮するが,液体状態になると容易に剥離できるようになり,可逆的な着脱を実現できる(図3)。何度も繰り返し可能な色素の構造変化に基づくため,接着剤の固液相転移を利用した着脱も繰り返し可能である。実際に,接着力が変化することなく10回以上の繰り返し着脱に成功している。
光照射による着脱では,接着剤層に光が届く必要があるため,照射面の基材に光透過性が要求されるという制限があるが,非加熱・非接触で位置選択的に着脱部位を選択できるという特徴を有している。また,比較的温和な解体条件であるため,加熱でダメージを負ってしまう精密部素材やバイオメディカル分野などの用途で利用が期待できると考えている。現在は基礎研究の段階であり,応答時間の短縮化,耐熱性の向上,剥離後の糊残りの低減など,様々な課題があるが,今後も実用化を目指して取り組みを続けていきたい。
産業技術総合研究所では,光照射により非加熱で液化―固化を繰り返す材料(図1)を開発し,着脱可能な接着剤への応用を行ってきた。本材料は,光照射により構造が変化する色素を利用しており,色素の構造変化により材料の硬さも変化する。適切な分子構造を採用すると,通常では固体状態で,紫外光を当てると軟化(液化)し(図2),可視光を当てると再び固体に戻すことができる。
この固液相転移現象を接着剤に利用すると,固体状態では基材を固着させ接着力を発揮するが,液体状態になると容易に剥離できるようになり,可逆的な着脱を実現できる(図3)。何度も繰り返し可能な色素の構造変化に基づくため,接着剤の固液相転移を利用した着脱も繰り返し可能である。実際に,接着力が変化することなく10回以上の繰り返し着脱に成功している。
光照射による着脱では,接着剤層に光が届く必要があるため,照射面の基材に光透過性が要求されるという制限があるが,非加熱・非接触で位置選択的に着脱部位を選択できるという特徴を有している。また,比較的温和な解体条件であるため,加熱でダメージを負ってしまう精密部素材やバイオメディカル分野などの用途で利用が期待できると考えている。現在は基礎研究の段階であり,応答時間の短縮化,耐熱性の向上,剥離後の糊残りの低減など,様々な課題があるが,今後も実用化を目指して取り組みを続けていきたい。