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サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質の働きが明らかに琉球大学 熱帯生物圏研究センター 高橋 俊一

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 サンゴは紫外線や青色光を受けると,緑色の蛍光を発する(図1)。これは,サンゴがもつ緑色蛍光タンパク質(GFP:Green Fluorescent Protein)の働きによる。このタンパク質は,下村脩博士によってオワンクラゲから単離・精製され,その後のノーベル化学賞の受賞に繋がったことでも知られている。サンゴやクラゲを含む多くの刺胞動物がGFPを持つことはよく知られている。しかし,GFPが生き物にとってどのような働きをするかは長年の疑問であった。われわれは,GFPの緑色蛍光が,サンゴに共生する藻類の誘引に働くことを実験的に明らかにした1)。
 サンゴは体の細胞の中に褐虫藻と呼ばれる藻類を共生させ,その藻類が光合成で生成した糖を栄養とすることができる。そのため,サンゴは餌の少ない環境に適応し,生物多様なサンゴ礁生態系の基盤となっている。褐虫藻を共生させるサンゴ種の多くは,環境中から褐虫藻を獲得し,共生させる。ただ,環境中の褐虫藻の数は非常に少ないため,サンゴには褐虫藻を誘引するメカニズムが存在するのではないかと予想されていた。しかし,その存在は不明であった。そこで,われわれは,サンゴの緑色蛍光に着目し,これが褐虫藻の誘引に働くかを実験的に調べた。褐虫藻を含む海水の入った容器の中に,生きたサンゴ片(蛍光あり)と骨格片(蛍光なし)を1つずつ置き,観察した。サンゴが強い緑色蛍光を発する青色光の下において,生きたサンゴ片の周りにのみ褐虫藻が集まった。また,この現象は,サンゴが緑色蛍光を発しない光条件(緑色光や赤色光や暗黒)では見られなかった。さらに,サンゴ片の代わりに市販の緑色蛍光ペイントを使っても,同様の現象が見られた。このことから,サンゴの緑色蛍光が海水中の褐虫藻の誘引に働くことが初めて明らかとなった。
 褐虫藻がなぜ緑色蛍光に誘引されるのかを明らかにするために,褐虫藻の走光性(光に対する泳ぎの向き)を調べた。その結果,褐虫藻は強い青色光に対して負の走光性(光から逃げる反応)を示し,弱い緑色光に対して正の走光性(光に向かう反応)を示すことが分かった。これは,自然界において,褐虫藻は太陽光から逃げるように海水中の深いほうへと泳ぎ,そこでサンゴの緑色蛍光を見つけると,それに向かって泳ぐことを示している。つまり,サンゴの緑色蛍光は,褐虫藻を誘う合図として働いているのである。サンゴの緑色蛍光を高めることで,褐虫藻を失って白化したサンゴの回復促進や,サンゴ幼生の生存率の向上が期待できる。

参考文献
1)Y. Aihara, S. Maruyama, A. H. Baird, A. Iguchi, S. Takahashi, J. Minagawa: “Green fluorescence from cnidarian hosts attracts symbiotic algae”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA., Vol. 116(6), pp. 2118-2123(2019)

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