人間重心検知疲労評価システム東京海洋大学 流通情報工学部門 渡邉 豊
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人間重心検知理論は,自動車や鉄道などの移動体への応用に実績のある3次元重心検知理論に基づいている(図1)。ばね構造体を有する移動体は,その重心位置に固有の揺動(モーション)を生じる。重心位置には,安定を保つことができる限界の高さ(横転限界)がある。コーナリング中に横G(横方向の加速度)が移動体に加わると,横転限界は下降する。横転限界が重心位置にまで下がると,移動体は横転する(図2)。また,タイヤやサスペンションなどのばねが劣化すれば,横転限界は下がり移動体は横転しやすくなる。古い車両に横転事故が多いのは,この理由からである(図3)。
人間は,筋肉(ばね)に支えられている,ばね構造体とみなすことができる。人間は各自固有の重心位置を有するので,それを3次元重心検知理論により計測できる。人間には,下肢部,胸部,そして,肩部がばね台座として働くので,それらに対応する,A.人間全体の重心,B.胸上部の重心,C.頭部の重心,の3つの位置が計測できる。これらの各重心位置には,それぞれ横転限界も存在し,これも計測できる。これが人間重心検知理論である。これらを利用して,次のように人間の疲労の蓄積を評価する。
立脚長時間作業などによる体力消耗は,筋肉疲労を顕著にする。上記3つの重心と連動する横転限界も,筋肉疲労の蓄積と共に変化してゆく。それを評価する。また,体力に問題はなくても熱中症にかかると,人間は姿勢を維持できなくなる。3つの重心の横転限界の下降の程度から,熱中症の深度を評価できる。実際に,気温35度を超える炎天下の真夏日に長時間歩行を行い,人間重心検知疲労評価システムをリアルタイムに稼働させたところ,熱中症の進行の度合いを的確に評価することができた(図4,図5)。
このように,人間重心検知理論は,人間が立って歩く時の安定の度合いを評価していると言える。これは言い換えると,人間がなぜ立って歩けるのか,その原理を証明したことになる(図5)。
人間重心検知理論による疲労評価システムのプロトタイプは,IoTモーションセンサーをヘルメットやコルセットなどにより身に着け,ウェアラブルな演算・表示装置により構成されている。Wi-Fi環境下で用いれば作業者の疲労評価情報をネットワーク経由で遠隔監視することもできる。
人間は,筋肉(ばね)に支えられている,ばね構造体とみなすことができる。人間は各自固有の重心位置を有するので,それを3次元重心検知理論により計測できる。人間には,下肢部,胸部,そして,肩部がばね台座として働くので,それらに対応する,A.人間全体の重心,B.胸上部の重心,C.頭部の重心,の3つの位置が計測できる。これらの各重心位置には,それぞれ横転限界も存在し,これも計測できる。これが人間重心検知理論である。これらを利用して,次のように人間の疲労の蓄積を評価する。
立脚長時間作業などによる体力消耗は,筋肉疲労を顕著にする。上記3つの重心と連動する横転限界も,筋肉疲労の蓄積と共に変化してゆく。それを評価する。また,体力に問題はなくても熱中症にかかると,人間は姿勢を維持できなくなる。3つの重心の横転限界の下降の程度から,熱中症の深度を評価できる。実際に,気温35度を超える炎天下の真夏日に長時間歩行を行い,人間重心検知疲労評価システムをリアルタイムに稼働させたところ,熱中症の進行の度合いを的確に評価することができた(図4,図5)。
このように,人間重心検知理論は,人間が立って歩く時の安定の度合いを評価していると言える。これは言い換えると,人間がなぜ立って歩けるのか,その原理を証明したことになる(図5)。
人間重心検知理論による疲労評価システムのプロトタイプは,IoTモーションセンサーをヘルメットやコルセットなどにより身に着け,ウェアラブルな演算・表示装置により構成されている。Wi-Fi環境下で用いれば作業者の疲労評価情報をネットワーク経由で遠隔監視することもできる。