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空間選択的にバンドギャップ構造を制御する中国浙江大学 孙轲,谭德志,邱建荣

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 レーザーは“最も鋭い刀”,“最も精密な物差し”,“最も明るい光”と言われている。そのなかでも,フェムト秒レーザーは超短パルス,超高ピークパワー,超広帯域などの特徴をもつレーザーで,実験室で比較的に容易に極端な物理的条件を実現することができる。現在,フェムト秒レーザーは光通信,計測,医療,工業生産など様々な分野で広く使われている。
 フェムト秒レーザーは,材料に集光照射することで焦点近くでの光強度が非常に高くなるため様々な非線形光学効果が発現し,瞬時的,暫定的または永久的な現象が誘起される。これまでガラスなどの透明な材料内部に集光照射することによってアップコンバージョン,長残光,屈折率変化,イオン価数変化,偏光依存ナノグレーティング,偏光依存気泡の発生など様々な現象が観測され,その応用が検討されてきた。しかし,フェムト秒レーザーと材料との相互作用は非常に複雑で,種々の非線形光学過程が絡んでいるため,現在発生する現象を予測することはほぼ不可能であり,綿密な実験的考察が不可欠となる。
 今回,われわれはフェムト秒レーザーにより新しい空間選択的なマイクロ分相とイオン交換現象を発見し,新しいフェムト秒レーザーによる構造制御技術を開拓した1)。これにより,無色透明なガラス内部にバンドギャップを連続的に制御した構造を実現し,光メモリ,Micro-LED,カラーホログラムなどへの応用を切り拓いた。
 これまで京都大学などのグループは,高繰り返しのフェムト秒レーザーをガラス内部に集光照射し,BBOなどの結晶が析出する現象を観測している。一般的に焦点の中心ではなく,焦点の近傍で結晶が析出される。それは高繰り返しフェムト秒レーザーが集光照射されるとレーザーパルスのエネルギーの熱蓄積効果により温度分布ができ,核生成速度と結晶成長速度が高い適切な温度域で結晶が析出しやすいからである。中心部は温度が高すぎてかえって結晶は析出しにくい。今回Cl-Br-I含有のCsO-PbX-P2O5-B2O3系ハロゲン酸化物ガラスに集光照射した後に,405 nmの光で励起すると,焦点中心部にいろいろな発光が観察され,しかも,フェムト秒レーザーの照射時間に応じて,発光波長がレッドシフトすることが確認された。
 TEMなどの分析により,フェムト秒レーザーの照射により,最初に局所的な高温高圧が発生し,マイクロ分相が誘起され,Clを富む相と残りのマトリックス相に二分され,照射時間が長くなるとClを富む相の中のClと残りのマトリックス相の中のBr(or I)の間でイオン交換が発生し,最終的にBr(or I)を富むハロゲン相が形成される。レーザー照射をストップすると,照射部分が急冷し,構造が凍結され,照射時間に応じた組成(すなわちバンドギャップ)のペロブスカイト微結晶が析出する。それによっていろいろな発光が観測される(図1(a))。 3次元的空間選択的にバンドギャップが異なる構造(図1(b),(c))は形成され,発光するので,光メモリ,Micro-LEDとカラーホログラム(図1(d))への応用が期待される。

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OplusE 2022年9・10月号(第487号)

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