ものづくりの才能は実践により培われる三鷹光器(株) 中村 義一
月を使った距離計測

1ナノを測る非接触三次元測定器の秘密
中村会長:偏光性観測もしましたね。偏光性観測というのは,明るくなったり暗くなったりと瞬いている星を正確に計ることです。星は温度変化をしているから色も変わっているわけです。そういうことをきちんと測ろう,ということです。これを応用しているのが,うちの三次元測定器ですね。オートフォーカスで1ナノまで測定できるもので,世界特許を抑えてあります。「焦点が合ったところに大きな信号が出ます,大きな信号が出たところを読めば1ナノが測れます」というふうにカタログなどでは光軸ですべて説明はしてありますが,実はそれだけではこの測定器を正確に説明したことになりません。この装置では光軸以外に光束も使って測っています。天体観測では,星の明るさを測る場合は光束を使うのです。聞き手:光束を使うというのは,光の量ということですか?
中村会長:ええ。レンズの光軸と光束で焦点を導いています。要するに焦点を合わせるものを2つ持っているということです。ただ,特許申請は光軸だけで説明して図面を出したから,日本の大手企業さんはそれをまねして作って「ちっとも出ない」「あれはウソだ」と言ってます(笑)。
聞き手:この話は掲載しても大丈夫なのでしょうか(笑)?
中村会長:2つめがあることは今まで口にしていませんでしたが,言わなくてもそのうちに分かるものだと思いますけどね。これは当たり前のことなんです。やらなければいけないことなんだけど,大学の先生たちは光軸計算だけをやるから失敗が多いんです。
偏光性観測というのは,古畑正秋先生が考えたものです。世界で5本の指にはいる先生だと思います。広瀬先生も古畑先生も天文台長になりました。私たちは,そういう先生と一緒に観測装置を作っていましたから,ゆっくりと共に研究ができたわけで,それの成果が製品にいろいろと導入されているわけです。
うちがよそのメーカーと違うのは,実際に第一線でやっている先生たちに来ていただいて教えてもらえるところです。その代わり,観測装置を作ってあげるということをやります。天文の機械を民間のほうに置き換えるとこういうものができますよ,というような感じでやっていますから,うちの会社は次々といろいろなロマンがわいてくる。皆さんも少し天文の勉強をしてみると,いろいろなアイデアが出ますよ。