これからの時代は光学やエレクトロニクス中心の物理教育であるべきではないでしょうか。東京大学 名誉教授 霜田 光一
生い立ち
まず生い立ちから話しますと,私は大正9年の生まれで,生家は埼玉県浦和市(現さいたま市)にあります。3歳の時に学校の教員をしていた父親の引っ越しにより東京の中野に移りました。その後,西荻窪に移り,結婚してからは吉祥寺に住みましたので,武蔵野界隈に80年の長きに渡り住んでいることになります。大学は東京帝国大学に進みましたが,小・中学は明星学園,高校は武蔵高校とすべて私立学校に通いましたから,実は官学よりも私学の方が肌に合っているのです(笑)。
当時の私学は官学のように官僚的なところがなく自由な雰囲気がありましたので,そのような気風が自然と身に備わったと思います。
東大を退官してから慶應義塾大学で,理工学部の設立に携わることになったのも,私学の気質に惹かれていたからかもしれません。
子供の頃を振り返って感じるのは,両親の教育に対する進歩的な考え方です。大正デモクラシーという時代的な背景によるものかもしれませんが,優れた教育者であった父の方針で自由に勉強することが許された私は非常に恵まれていたといえます。
私は小学生の頃から工作が好きで,モーターを作って回したり,模型飛行機を作って飛ばしたりしていました。中学でも学校の勉強より電車や蒸気機関車の模型を作るのに夢中で,小型映画の撮影機や映写機も作りました。物つくりが好きでしたから,高校へ入学した時には,大学は電気工学科に進もうと考えていました。しかし,勉強しているうちに,次第に基礎的な方面に興味が移り,アインシュタインの本などの影響もあって,結局大学は物理学科に入りました。