本物を目指して「門前,市を成す」であれ東京大学 教授 古澤 明
光をやっておけば,きれいな物理が学べる
聞き手:今後の光学分野を担う若者,若手研究者・技術者にメッセージをお願いします。古澤:光の量子力学というかすべての物理学的発見は光なんです。相対性理論もそうだし,いろいろな最初の原理の確認実験は光で行われているので,「基礎学問を目指すのなら,光は面白いよ」と言えます。産業分野でも,通信に関してはもう光しかあり得ないですし,コンピューターも光になってしまえばもっといいですね。

古澤研究室の6畳ほどの実験室一面に広がる,量子テレポーテーションの実験装置
聞き手:これから,「物理にちょっと興味がある」という人は,ぜひ光の分野を目指して間違いないということですね。
古澤:うん,つぶしが利きますね(笑)。光をやっておけば,きれいな物理が学べるので。光というのは,量子性も波動性も目に見えますよね。波動性は干渉縞がそもそも見えるし,量子性だってショットノイズは普通のディテクターで見えます。だから,量子力学を目で見ることができるんです。

箱の中には,レンズや鏡が1万分の1mm単位で調整されびっしりと並ぶ

古澤 明(ふるさわ・あきら)
1984年,東京大学工学部物理工学科卒業。1986年,東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻修士課程修了。同年,株式会社ニコン入社。ニコンに在籍しながら,1988~90年は東京大学先端科学技術研究センター研究員を,1996~98年はカリフォルニア工科大学客員研究員を務める。帰国後,ニコンに復帰した後,2000年から東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻助教授。2007年,東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻教授。現在に至る。●専門:非線形光学,量子光学(光化学ホールバーニング,フォトンエコー,スクイージング,キャビティ聞き手ED,原子トラップ量子テレポーテーション,量子コンピューター)
●主な受賞歴等:1998年,Caltechで「量子テレポーテーション実験」に世界で初めて成功し,『Science』の1998年10大成果に選出される。2004年には3者間の量子もつれ制御に,2009年には9者間の量子もつれ制御に成功。久保亮五記念賞,日本学術振興会賞,日本学士院学術奨励賞,量子通信国際賞などを受賞。