苦労して,問題に真面目に向き合って解決した人たちというのは強くなる東京工業大学栄誉教授 末松 安晴
「光がものになればものすごく面白い」という思いがあって,ものすごく楽しかった
聞き手:研究の中で自信をなくされたりしたことはございますか。末松:私は自信がなくなったという経験はないです。光通信は,もともと何もないところから研究していますからものすごく楽しかったのです。年中,学生とディスカッションをしていて,うちへ帰るのは11時以降ぐらいでした。ただ,私はずっとやり続けていたのではありません。休むときは1日何もしないとか。ちゃんと休むときは休んでいました。そうしないと体も発想も持ちませんから。 最初から何もないし,本当なのかどうかも分からない状況でしたから,周りの方から,「もっと大事なことがありますよ」と言われたことはありました。これはけっこう堪えましたが,それで自信を喪失するということはありませんでした。光がものになればものすごく面白いという思いがありましたからね。ただ,早く商用化してほしいという願いを常に持っていた。
また,初期の温度による波長可変の動的単一モードレーザーを介した商用化の波の広がりの早さに比べて,性能が高いと思って提案し実証していた電気的な波長可変レーザーの利用はそれから20年近くも遅れ,その間は実に複雑な思いでした。これがある分野で優位となったのは4年程前のことで,このことを知らされたときは年がいもなく欣喜雀躍の思いでした。 <次ページへ続く>
末松 安晴(すえまつ・やすはる)
1932年 岐阜県生まれ 1951年 岐阜県立中津高校卒業 1955年 東京工業大学理工学部電気工学コ?ス卒業 1960年 東京工業大学大学院理工学研究科修了(工学博士) 1960年 東京工業大学理工学部電気工学科助手 1961年 東京工業大学理工学部電気工学科助教授 1967年-1968年 オハイオ州立大学 文部省在外研究員 1973年 東京工業大学工学部電子物理工学科教授 1989年 東京工業大学学長に就任 1997年-2001年 高知工科大学学長に就任 2001年-2005年 国立情報学研究所所長に就任 2010年 高柳健次郎財団理事長 2011年 東京工業大学栄誉教授●研究分野
光通信技術,レーザーデバイス
●主な受賞歴等
1983年 ワルデマー・ポールセン金メダル 1983年 コミュニケーション功労者内閣総理大臣表彰 1986年 デビット・サーノフ賞 1989年 東レ科学技術賞 1994年 ジョン・チンダル賞 1994年 C&C賞 C&C財団 1994年 放送文化賞(日本放送協会) 1996年 紫綬褒章 1997年 エドワード・ライン賞 2003年 IEEEメダル(ジェームス・マリガンJr. エヂュケーション) 2003年 文化功労者 2006年 瑞宝重光章 2014年 日本国際賞