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苦労して,問題に真面目に向き合って解決した人たちというのは強くなる東京工業大学栄誉教授 末松 安晴

人類がどう発展の契機をつかんできたかを知らないといけない

末松:はっきり言って,どんな人間でも,基礎がないと駄目です。だから,基礎は本腰を入れてやってほしいですね。周りから若干遅れてもいいから,本当に基礎的なところは学生時代にきちんと学んでほしいです。基礎というのは論理の仕組みの理解です。
 たとえば,物理的な法則というのは,どういう仕組みで成り立ち,それがどこまで正しいのか。そこがよく分かっていないと,いろいろな仕組みを使うときに障害となるのです。それが分かっていれば,自分で新しい仕組みを作れます。大学は,基礎の一番大事なところをきちんと教えなければ駄目です。  もう1つは,目標に関してものすごい時間を使わなければ駄目だと思います。本当に良い仕事をするなら,若い時代にたくさんの時間を使って勉強をしなさいと。成功した人がよく,おれはあまり勉強しなかったと言う人がいますが,あれはうそです。そんなはずは絶対にありません。ものすごく勉強している人が,日本だけじゃなくて,世界中にいるわけです。3日間周期で寝るのは2日間周期ぐらいの覚悟を持ち,それをやりきれる人でないと,イニシアチブをとるような研究に挑戦できないと思います。
 ただ,基礎だけでは駄目で,社会の変化や歴史が分からないといけません。何が社会で必要とされているのかは,人間の性質や,過去に人類はどういうことで発展の契機をつかんだのかを知ってないといけないのです。あわせて「お金がどう動くか」も知っている必要があると思います。
 具体的にいうなら,自分が10歳から25歳まで,その間に社会や技術がどう変わっていったかを考えてみると良いかもしれません。例えば,自動車だったらこんなふうに変わっていったとか,あるいは携帯電話がこう変わったというのを見れば「ああ,そうか」と自分で分かるわけです。そういう変化のシミュレーションを自分で行い,長い歴史を勉強するだけではなく,身近に起こったことがどうなっていったかを時系列で観察するのです。 <次ページへ続く>
末松 安晴(すえまつ・やすはる)

末松 安晴(すえまつ・やすはる)

1932年 岐阜県生まれ 1951年 岐阜県立中津高校卒業 1955年 東京工業大学理工学部電気工学コ?ス卒業 1960年 東京工業大学大学院理工学研究科修了(工学博士) 1960年 東京工業大学理工学部電気工学科助手 1961年 東京工業大学理工学部電気工学科助教授 1967年-1968年 オハイオ州立大学 文部省在外研究員 1973年 東京工業大学工学部電子物理工学科教授 1989年 東京工業大学学長に就任 1997年-2001年 高知工科大学学長に就任 2001年-2005年 国立情報学研究所所長に就任 2010年 高柳健次郎財団理事長 2011年 東京工業大学栄誉教授
●研究分野
光通信技術,レーザーデバイス
●主な受賞歴等
1983年 ワルデマー・ポールセン金メダル 1983年 コミュニケーション功労者内閣総理大臣表彰 1986年 デビット・サーノフ賞 1989年 東レ科学技術賞 1994年 ジョン・チンダル賞 1994年 C&C賞 C&C財団 1994年 放送文化賞(日本放送協会) 1996年 紫綬褒章 1997年 エドワード・ライン賞 2003年 IEEEメダル(ジェームス・マリガンJr. エヂュケーション) 2003年 文化功労者 2006年 瑞宝重光章 2014年 日本国際賞

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