日本では優秀な技術者は育つけれどもアーキテクトが育ちにくい名古屋大学大学院教授(電子情報システム専攻) 佐藤 健一
名古屋大学に移ってからも基本的には光ノードの高度化,より大容量化,より小型化,より機能を高くというような研究をしています(写真3)。私が光技術にずっと携わってこられた方と多少違うとしたら,まず物性や結晶成長から始まり,それから光のトランスミッションをやり,それから電気のATMを媒体としてネットワークを研究し,それらをベースに光のネットワークを考えているということでしょうか。
私がアメリカで「私の専門は何か」と聞かれれば,「ネットワークアーキテクト」と答えるとそれが普通の用語として通じます。でも日本で「ネットワークアーキテクト」などと言っても,「それは何ですか?」という感じだと思います。
日本は,どちらかというと,アーキテクチャー的な話よりも,物の仕様とか信号の送り方とか,個々の技術部分の関心が高かったということです。そのなかで例えばATMのバーチャルパスという概念や光パスを中心として,アーキテクチャー的な研究でその開発成果が世界標準になったというものは,非常に少ないと思います。
当時,ATMのバーチャルパスを提案した論文(IEEE Trans. on Commun.)を見ていただくと,式もないし実験結果も無く,図面も情報の送り方を説明する絵とアーキテクチャーの図面だけです。外国であればアーキテクチャー的な仕事は結構有りましたが,日本ではこういう領域の研究をされる方は少なかったと思います。
私の経歴としては結構幅広く色々なことをやってきたのですが,そのことは自分自身にとってとても良かったと思っています。
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写真3 低消費電力多階層光クロスコネクトノードを開発
(NTT光エレクトロニクス研究所と共同)
私がアメリカで「私の専門は何か」と聞かれれば,「ネットワークアーキテクト」と答えるとそれが普通の用語として通じます。でも日本で「ネットワークアーキテクト」などと言っても,「それは何ですか?」という感じだと思います。
日本は,どちらかというと,アーキテクチャー的な話よりも,物の仕様とか信号の送り方とか,個々の技術部分の関心が高かったということです。そのなかで例えばATMのバーチャルパスという概念や光パスを中心として,アーキテクチャー的な研究でその開発成果が世界標準になったというものは,非常に少ないと思います。
当時,ATMのバーチャルパスを提案した論文(IEEE Trans. on Commun.)を見ていただくと,式もないし実験結果も無く,図面も情報の送り方を説明する絵とアーキテクチャーの図面だけです。外国であればアーキテクチャー的な仕事は結構有りましたが,日本ではこういう領域の研究をされる方は少なかったと思います。
私の経歴としては結構幅広く色々なことをやってきたのですが,そのことは自分自身にとってとても良かったと思っています。
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佐藤 健一(さとう・けんいち)
1953年 東京生まれ 1976年 東京大学工学部電子工学科卒 1978年 東京大学大学院工学研究科電子工学専門課程修士課程終了 1978年 日本電信電話公社横須賀電気通信研究所入所 1985年 British Telecom Research Laboratories交換研究員 1999年 NTT未来ねっと研究所フォトニックトランスポートネットワーク研究部部長 2004年 NTT R&Dフェロー 2004年 名古屋大学大学院教授(電子情報システム専攻)●研究分野 光通信ネットワーク,光ネットワークシステム
●主な活動・受賞歴等
1984年 電子情報通信学会学術奨励賞 1990年 電子情報通信学会論文賞 1999年 IEEE Fellow Award 2000年 平成11年度電子情報通信学会業績賞 2002年 平成14年度文部科学大臣賞(研究功績者) 2003年 電子情報通信学会フェロー 2005年 電子情報通信学会通信ソサイエティ功労顕彰 2007年 電子情報通信学会通信ソサイエティ論文賞 2008年 電子情報通信学会通信ソサイエティ論文賞 2009年 ONDM 2009(The 13th International Conference on Optical Networking Design and Modeling - ONDM 2009)Best Paper Award. 2012年 電子情報通
信学会功績賞 2013年 CLEO-PR & OECC/PS 2013(The 10 th Conference on Lasers and Electro-Optics Pacific Rim, and The 18 th OptoElectronics and Communications Conference/Photonics in Switching 2013), Best Paper Award 2014年 紫綬褒章
IEEEフェロー
電子情報通信学会フェロー
NTTR&Dフェロー