技術的知識と十分なソフトスキルがなければ,大きなインパクトを与えることはできないWilhelm Ulrich
自分自身で最適な解を見つけられるように導くのがコーチング
Ulrich:2013年から2年間,私はミュンヘンのAcademy of Business Coachingにおいて,Systemic Business Coachingのトレーニングを受けました。それはコーチングを学ぶ教育コースです。様々な個性をもった人たちによる優れたチームのリーダーとして,どのようにふるまうべきか多くを学びました。このトレーニングは私のチームをよりよく導く上で大いに役立ちました。少なくとも悪くはならなかったと思います(笑)。コーチングというのは,顔をつき合わせて人対人で行う手法で,各個人がその課題について筋の通った最善の解をどうやって見つけたらよいかアイディアが欲しいときに,大いに助けとなります。それで,私は私の答えを与えるわけではなく,自分自身で最適な解を見つけられるように助言して導くようにしています。
2013年から2014年まで,ツァイスの仕事と平行して学びました。これはキャリアステップを登るために学んだのではなく,自分の仕事をよりよくするためです。会社の指示で受講したわけではありませんが,私の上司と会社が十分サポートしてくれました。私がコーチング能力を高めることが,チームの各個人および全体のパフォーマンスの向上につながると確信していたので,個人的にお願いしました。フルタイムではありませんが,仕事の合間に2年間で30日ほど,アカデミーで他人をコーチングしたり助言をしたりして,学生のように学びました。coacheesとかmenteesと呼ばれる,個人的に問題解決のサポートを必要としている人に対して実際にコーチングしました。コーチングは実施が非常に重要です。座学で学んだことを継続的に実践する必要があります。
すべてのチームリーダーにコーチングがどういうものか,それは話すというよりは聞くことだと知ってほしいと思います。大変重要なのですが,多くの上司は遺憾ながら話すモードだけにしばしばなってしまいます。
私は人と仕事をするのが好きです。彼らの個人的な問題を理解してあげたいと思っています。それらの問題を解けるとは思っていませんが,適切な助言によって彼らが問題解決に至ることができればと考えています。そして,彼らが行動を修正して,より成功し,また満足できる様子を見ることができればと願っています。コーチングは人のソフトスキルや個人の振る舞いに働きかけるものであり,技術的能力に働きかけるものではありません。
技術的知識や専門的技能がなければ,何も影響を及ぼすことはできません。しかし,十分なソフトスキルがなければ,大きなインパクトを与えることはできず,小さなものとなってしまいます。
聞き手:アメリカから来た概念だと思いますが,いわゆるEQに関係するのでしょうか。
Ulrich:そうですね。EQというのは,感情的知性とか共感とかいうものですね。
聞き手:技術に関するIQだけでなく,人がどう反応するか,どう考えているかを理解するためのEQが要求されます。それがより優れた仕事に向かわせてくれるのでしょうか。
Ulrich:大学は重要で,専門的な技術能力の確かな基礎は絶対に必要です。しかし,大きなインパクトを創り出したいのであれば,興味を持ってサポートしてくれたり一緒に楽しんでくれる仲間が必要です。単にオフィスに座ってホットな課題に自分だけで一所懸命取り組んでも,誰も協力してくれず興味を持ってくれなければ成功しないでしょう。インパクトはありません。
プライベートなことを少し話します。私は1987年に結婚し,2人の愛すべき子供がいます。家族はいつも物理的にも精神的にもバランスよく私を支えてくれ,仕事上のキャリアを遂行するうえでも助けてくれました。また新鮮な様々な見識を教えてくれ,それらは決して会社では得られないものです。
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Wilhelm Ulrich(うぃるへるむ・うるりっひ)
ハンブルグ大学より応用科学のengineering degree(engineering degree from the University for Applied Science in Hamburg)を授与される。1980年 ツァイス光学設計の数学部門に入社し,様々な事業の最先端光学設計プロジェクトに従事(カメラ, 顕微鏡, レーザー走査顕微鏡, 医療顕微鏡,眼底カメラ,赤外光学系,干渉計,半導体露光用光学系)。1995~1997年 アーレン大学において,光エレクトロニクスの学生向けに光学設計の専門講義(associate lecturer)を行った。1997~2009年 カールツァイスSMT(SMT:Semiconductor Manufacturing Technology)AGにおいて最先端半導体露光装置の光学設計の長を務めた。2009年7月から現在 光学システム(レンズマウンティング基本設計を含む)設計の長を務めた。2014年~ オーバーコーヘンとイエナでのカールツァイス研究所のシステムエンジニアとアルゴリズムに関する責任者を務めている。2012~2014年 ミュンヘンのビジネスコーチング学院(Munich Academy for Business Coaching)でコーチング技術を学んだ。2013年~ ISO TC172“Optics and Photonics”のChairman。