【重要】技術情報誌『O plus E』休刊のお知らせ

限界は打ち破ることができないが壁は皆が協力すれば乗り越えられる日本電信電話株式会社(NTT) 篠原 弘道

今までの電気の延長線ではない光という世界に魅了される

聞き手:工学分野に興味をもたれたきっかけについて教えてください。

篠原:理工系に興味を持ったきっかけは,中学校のとき虚数の存在を知ったことにあります。学校では教えてくれませんから,自分で本を読んで調べていくうちに,今まで理解していなかった虚数が,自然現象を表現するために役に立っていることがわかりました。そこから,原子構造,電磁気,相対性理論など,ポピュラーサイエンスの本を読みあさって,知識を得ることが楽しくなっていきました。数学や物理は,歴史の年号のように覚えなくても,基本原理さえわかっていれば論理で解いていけるところも自分に合っていました。本を読んでいく中で,アインシュタインの光の速度や,光は粒子なのかとか,光がいろいろなところに出てくることに気がつきました。そこから,光に対する興味を持ち始めました。
 私が大学に入った四十数年前は,電気で実現している回路を全部光で実現するという話が出始めたころでした。今までの電気の世界の延長線でなく,まったく違う世界が始まる予感があり,光通信を探究したい思いで,大学,大学院時代を過ごしました。
 NTT(旧電電公社)に入ったきっかけも,光通信がいよいよ始まるところで,光通信の実現に寄与したいと思い,1978年にNTTの研究所に入りました。
 ただし,当時はまだ東京-大阪,大阪-福岡など,中継系に光ファイバーを使っていこうとしていたころで,私が配属されたのは,NTTのビルからお客様のところまで光を入れるためのアクセス系の研究をしているところでした。FTTH(Fiber To The Home)という言葉もなく,アクセス系に光を入れていくとこんなに良いことがあるとはいっても,当時はテレビ電話ができるようになるくらいでした。

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篠原 弘道

篠原 弘道(しのはら・ひろみち)

1954年生まれ。1978年 早稲田大学大学院・修士課程修了。同年,日本電信電話公社(現 NTT)入社,光アクセス技術の研究開発に従事。アクセスサービスシステム研究所長,情報流通基盤総合研究所長,研究企画部門長を経て,2014年 代表取締役副社長。2018年6月より取締役会長。

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