セミナーレポート
運転の自動化のための画像認識技術(株)東芝 研究開発センター 岡田 隆三
本記事は、画像センシング展2017にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。
自動運転を取り巻く動向
自動運転に対する期待が高まっています。社会的な期待としては,まず交通の安全性向上が挙げられます。日本での年間の交通事故死者数は4000人余りですが,全世界では170万人,2030年には190万人に増加すると言われています。また,交通の効率化,CO2排出削減,高齢者の交通手段の確保や移動時間の有効活用なども挙げられます。一方,産業的期待として,自動車産業の競争力強化,自動車関連産業の拡大・創出,新サービスの創出があります。自動運転のドメインは大きく分けて3種類あります。1つは乗用車で,皆さんが普段乗っている自動車を自動化するということです。2つめは,隊列走行です。産業的にはドライバーの人手不足ということがあり,自動運転で先頭についていく隊列走行を可能にすることで,ドライバーの数を減らすことができると期待されています。3つめは共有モビリティです。町中を走る乗り合いバスなどを自動化することで人件費の削減につながります。
自動運転には,手動のレベル0から完全自動化のレベル5までのレベルがあります。レベル1は補助の段階で,すでに先進運転支援システム(ADAS)が普及しています。SUBARUのEyeSightでは,ステレオ(2眼)カメラを使い,プリクラッシュブレーキなどを実現しています。
現在では,トヨタ,日産,ホンダをはじめ,軽自動車にも搭載されています。世界的には,Mobileye社が単眼カメラシステムを全世界展開し,多数の自動車メーカーが採用しています。この普及を牽引しているのが,欧州の新車安全評価基準(EuroNCAP)です。
レベル2は部分的自動化で,2016年から量産が始まっています。例えば,メルセデスベンツEクラスの「ドライブパイロット」の場合,ステレオカメラ+レーダー8個+超音波センサーという構成で,単一車線の自動走行や車線変更アシストなどを実現しています。
レベル3の条件付き自動化では,2017年から高級ブランドで導入が計画されています。Audi A8の「トラフィックジャムパイロット」では,時速60キロ以下の渋滞時,運転手に監視義務のない同一車線自動運転を実現します。レベル4以降の高度な自動化については,まだ開発の段階で,法整備の問題などもあり,普及するのは2030年以降と予想されます。
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(株)東芝 研究開発センター 岡田 隆三
1999年 大阪大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。同年,(株)東芝入社。研究開発センターにて,車載画像認識,映像監視を中心にコンピュータビジョン技術,システムの研究開発に従事。2006年~2008年 カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員。電子情報通信学会会員。