セミナーレポート
自分で考えるロボットの実現に向けてオムロン(株) 技術・知財本部 技術専門職 井尻 善久
本記事は、画像センシング展2018にて開催された誰にでもわかる特別講演を記事化したものになります。
自分でつかみ方を考える
次に,「自分でつかみ方を考える」ことについて紹介します。これは,つかみ動作の評価基準を満たすつかみ姿勢を自律的に求める問題です。学術分野では,把持合成(グラスプ合成)もしくはグラスプランニングと呼ばれ,研究が進んできました。把持合成には,「対象が既知のもの」「既知のものに類似」「未知」の場合に応じていろいろな手法があります。対象が既知であれば,物理則に基づいてつかめるかどうかシミュレーションができます。このための基準としてはフォースクロージャーがあります。これは,任意の方向の外力・モーメントに対して,釣り合う力・モーメントを接触点で発生させられるかどうかを評価するものです。これに対し,対象が未知の場合には,計測された特性に基づきつかめるかどうかを判断する必要があります。計測の方法としては非接触であることから画像もしくは三次元計測結果がよく利用され,形状をセンシングしそれに基づき把持箇所推定する方法が多く研究されています。一方,形状解析結果だけではなく実試行経験に基づき把持が可能かどうかを判定する手法の研究が近年では活発であり,実試行による把持箇所推定があります。例えば数~数十万回の実把持試行を行い,画像を元に把持位置・角度を予測する経験的なモデルを構築します。そのほか,実試行ではなくシミュレーションを利用したシミュレーションベース学習法や,ビジョンとモーションを統合的に学習するEnd-to-end学習法なども出てきており,近年のAIブームと相まって急速に進化を遂げています。オムロン(株) 技術・知財本部 技術専門職 井尻 善久
2002年,京都工芸繊維大学大学院工芸科学機械システム専攻修士課程修了,同年オムロン株式会社入社。2012年,名古屋大学大学院情報科学研究科メディア科学専攻博士課程修了。2010年より奈良先端科学技術大学院大学客員准教授。人・顔画像処理・産業用画像処理,ロボティクスに関する研究開発に従事。2009年画像センシングシンポジウム高木賞,2009,2011年電子情報通信学会PRMU研究会研究奨励賞受賞。