セミナーレポート
商用化が目前に迫る完全自動運転における画像センシング技術の重要性インテル(株) 事業開発・政策推進ダイレクタ 兼 名古屋大学客員准教授 野辺 継男
本記事は、画像センシング展2018にて開催された招待講演を記事化したものになります。
クルマとICTの関係
クルマは出荷後10年以上市場で稼働するのに対して,ICT(Information and Communication Technology)は2~3年で大きく進化することから商品ライフサイクルが合わず,クルマにICTを導入するのは容易ではありませんでした。しかし,これが完全自動運転になり所有から共有(シェアリング)に代わると,稼働率が現在の4%程度(1日1時間程度の利用)から10倍以上伸び,ライフサイクルが2~3年と短くなり,ICTとの親和性が高くなります。1907年,T型フォードからクルマが大量生産されるようになり,同時期テキサス州で原油が見つかり,石油と自動車の生産は爆発的に拡大しました。1970年頃から半導体が商用化され,クルマもECU(Engine Control Unit)と呼ばれる装置で各種電子制御が可能になりました。2000年に入ると,高級車には100種類,量産車でも30種類ほどのECUが搭載され安全性能が高まり,今日では事故の94%はドライバーの認識,判断,操作ミスといわれております。さらに今日では人間の視覚や認識を置き換える画像センサー群と判断・操作を自動化する車載コンピューターが開発されています。
さらに,2010年迄には,携帯によるワイヤレスデータ通信が普及し,クルマのセンサー情報をデータセンターに集め分析することで,渋滞情報等クルマ向けに利便性の高い情報がドライバーに伝えられるようになりました。これはまさにクルマのIoT(Internet of Things)です。
2020年に向けて,クルマにはカメラやレーダー,さらにはライダーと呼ばれる多様なセンサーが多数搭載され,人間のかわりに白線や障害物等の周辺環境をより正確に感知するようになります。多くのクルマから,そうした環境データとECUからの走行データをクラウドに集めディープラーニングに掛けることで,3次元地図や走り方を機械的に学習することができるようになります。それらが,自動運転を実現するソフトウェアとなり2020年頃から,海外の一部地域から完全自動運転の商用化が始まる見込みです。
並行して,クルマと鉄道やバス,さらには自転車等のあらゆる移動手段と効率的に結びつけ,交通移動を最適化するMaaS(Mobility as a Service)と呼ばれるサービスが出現し,今後の世界ではクルマをつくること以上に重要な産業になる可能性があります。
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インテル(株) 事業開発・政策推進ダイレクタ 兼 名古屋大学客員准教授 野辺 継男
早稲田大学理工学部応用物理学科卒。ハーバード大学PIRPフェロー。NECでPC事業,ソフトバンクでインターネット事業の立ち上げ,日産自動車でクルマのIoT化を行い,2012年,インテル入社。クルマのICT化から自動運転全般のアーキテクチャー構築に従事。2014年,名古屋大学客員准教授兼務。専門分野はICT全般の先端技術および事業開発など。