セミナーレポート
中国AI最新事情と画像センシング技術の自動運転への応用センスタイムジャパン CEO 勞 世竑
本記事は、画像センシング展2019にて開催された招待講演を記事化したものになります。
>> OplusE 2019年11・12月号(第470号)記事掲載 <<
中国でのAI企業の急激な発展について
今日,皆さんと一緒に考えていきたいことは,「なぜ日本企業は世界に誇れる技術が減ってきたのか」「日本企業が世界で勝てるようにするために何か方法があるのか」です。今,中国で注目されているのがAIの技術です。多くの企業がAIへの投資を強化しており,急速に発展してきています。国家戦略として,2020年に中国のAI技術を米国と並ぶレベルにすると発表しています。現時点で,論文の数は米国を超えており,米国のIT業界では中国出身の技術者がたくさん活躍しています。また,起業も盛んになっており,多くのベンチャー企業が香港,深圳,北京に設立され,その中には,ユニコーン企業と言われる評価価値が10億ドル以上の企業が多数含まれています。世界中でユニコーン企業は300社以上あり,そのうち約3分の1の100社近くが中国にあり,中でも北京の中関村から出てくるユニコーン企業が中国の半分近くを占め,米国シリコンバレーより元気があると言われています。
2018年の中国におけるユニコーン企業例のトップは,ドローンの世界トップメーカーDJIです。その次に,ロボットのスタートアップ企業UBTECHや,AIと顔認識技術の研究開発を手がけるセンスタイムが入っています。そのほかの企業も,画像認識や顔認識,AIチップなどのベンチャーがほとんどです。
なぜ,中国でこれほどたくさんのユニコーン企業が生まれたのか。主に3つの理由があります。1つ目は,豊富な人材があること。2つ目は政府の支援があること。そして,3つ目は活発な投資があることです。ユニコーン企業の1社であるセンスタイムは,香港中文大学にあるTang Xiao’ou教授のマルチメディア研究室を母体として2014年に設立されました。世界に先駆けてコンピュータービジョンにディープラーニング技術を応用し,顔認識技術で人間を超える性能を実現しました。そして,会社設立からわずか2年後の2016年,ILSVRC2016で3冠を達成しました。現在,スタッフは3000人を超えており,その中でPh.D.の学位を持っている者が200人以上います。
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センスタイムジャパン CEO 勞 世竑
1984年 中国浙江大学卒業 京都大学留学後,1992年オムロン株式会社入社 顔認識技術の開発研究に従事。2016年SenseTime Groupの日本法人であるセンスタイムジャパンを設立。ディープラーニングを活用したコンピュータビジョンの技術を提供する最先端企業として,顔検出・認識,車・歩行者検出技術開発,ホンダと自動運転の実現を目指した共同研究を行っている。SenseTime Group副総裁,知能運転事業統括。センスタイムジャパンCEO。