セミナーレポート
本人が気付かない精神疲労をさりげなく見つけて教えてくれる,家族のような見まもりシステムを目指して東京理科大学 工学部 電気工学科 教授 阪田 治
本記事は、画像センシング展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
タブレットPCの指でのパス解除を用いた疲労測定の評価
研究開発例の2つ目として,タブレットPCを用いた疲労測定の評価があります。タブレットPCやスマホのロックを解除するためパスワードを打つようなとき,あらかじめ自分で設定したパターンを指でなぞるものがあります。非常に精神的に疲れているときには失敗したりして,健康なときとは動きが変わったりします。その程度を検出します。パターンをなぞっているときの指先のストロークを動画としてとらえ,そのなかから特定の動きを見つけ,疲労を検知します。長期にわたり疲労が蓄積すると,本来なら何でもないようなルーチン手作業の精度が低下します。指が各ポイントを通過する速度,本来直線でいくべきところがどれくらい外れているか,カーブの角度などをパラメーターとして抽出して分析し,違いを検出します。そのほか,顔の一部分の温度の上昇をサーモグラフィなどで撮影して分析する手法もあります。こうしたものを組み合わせることで,本人が気づかない精神疲労を,家族の見まもりのように事前に見つけ,教えてくれるシステムの開発を目指しています。
東京理科大学 工学部 電気工学科 教授 阪田 治
2001年筑波大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。茨城県立医療大学嘱託助手,(独)食品総合研究所特別研究員,山梨大学 大学院 医学工学総合研究部助教・准教授を経て,2016年東京理科大学 工学部 電気工学科准教授,2021年同教授。多次元生体信号解析および生体画像解析の理論研究,およびこれら技術の医療工学や農業・食品工学への応用に関する研究に従事。