セミナーレポート
ニューノーマルにおけるロボットビジョン研究産業技術総合研究所 インダストリアルCPS研究センター 堂前 幸康
本記事は、画像センシング展2021にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
>> OplusE 2021年11・12月号(第482号)記事掲載 <<
製造・物流への影響とサプライチェーンの変化
新型コロナウイルスは,2019年にその存在が確認され,2020年には全世界に拡散し,経済・生活を一変させました。2021年6月現在,日本でも世界でもいまだ収束の兆しが見えない状況です。感染症の終息の見通しについては,ワクチン接種が年内に国内に行き渡るという話もあり,ポジティブな状況ではありますが,100年前のスペイン風邪の場合は3年間死者が増加傾向にありました。コロナの影響で生活様式は大きく変わりました。家族・外出・仕事,あらゆる生活において人との接触を避け,感染を避けることが定着してきています。コロナ終息後もこうした生活様式は持続する可能性があります。さらに,今までは大都市に人が集まる一極集中型の状況が続いてきましたが,大都市周辺への人の動きや,テレワークを使った遠隔の活動が盛んになってきています。消費の動向としても,外からウチ(内・家)と,外での消費が大きく減り,家の中で必要な消費が伸びてきています。また,Microsoft Teams,Zoomといったオンラインコミュニケーションツールや,eコマースなどのオンライン販売も増加しています。
製造・物流の影響としては,2020年3月時点で,製造業・流通業の58%に課題が発生しています。日本の製造業は海外依存度が高く,サプライチェーン寸断の影響を大きく受けました。自動車などの部品点数の多い製造品は,部品が揃わず製造がストップしました。また,IT機器などモジュール化しやすい部品数が少ない製品も,海外拠点での製造に依存しており,他国工場のストップにより製造が困難になりました。
サプライチェーンの変化としては,安定的な物流ネットワークの維持や,緊急時の代替輸送経路の確保など,効率重視から臨機応変型への対応が求められています。さらに,これらに伴い,物流施設内の機械化・自動化の加速を検討し始める動きが出てきています。今後,新興国による後進国への工場・技術移転から,ITツール多様化による世界的なバーチャルワークの実現といった変化が出てくると思われます。
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産業技術総合研究所 インダストリアルCPS研究センター 堂前 幸康
三菱電機株式会社 先端技術総合研究所主席研究員を経て,国立研究開発法人産業技術総合研究所に入所。現在,インダストリアルCPS研究センター オートメーション研究チーム長。同所人工知能研究センター付き,大阪大学招聘教授,奈良先端科学技術大学客員教授を兼務。パターン認識やロボティクスの産業応用に関する研究開発に従事。米国R&D100賞,情報処理学会喜安記念業績賞など受賞。博士(情報科学,北海道大学)