セミナーレポート
コンピュテーショナルイメージング概説東京大学 大学院 情報理工学系研究科 准教授 堀﨑 遼一
本記事は、画像センシング展2022にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
コンピュテーショナルイメージングの研究動向2
デジタルホログラフィーは,対象に対してレーザー光などのコヒーレント光を当て,出てきた伝播光をイメージセンサーで取得します。参照光を別途導入することで,被写体の基礎振幅を推定することが可能になります。無色透明な生体やガス,音波などを可視化することができます。また,光波情報をもっているので,撮影した後に光波を逆伝播することで,焦点位置を合わせたり,3次元情報を引き出したりすることも可能になります。符号化開口は,X線などの光を曲げることが難しい波長領域で研究が進められてきました。開口を細かく分け,それをランダムに散りばめることで,高い空間分解能と大きい光量の両方を実現できます。
機械(深層)学習をベースにしたCIのひとつとして,散乱光計測があります。散乱は,生体や大気揺らぎ,霧,拡散板など,身の回りにあふれる光学現象です。散乱現象は,基本的にイメージングシステムのパフォーマンスを著しく落とします。事前に空間光変調器上にパターンを表示して撮影するのを繰り返し,大きな入出力のデータセットを作っておきます。そのようにして得られたデータセットを用いて,イメージセンサー上で散乱画像から空間光変調器上での標示画像を推定する逆関数を機械学習によって求めます。
ゴーストサイトメトリーと呼ばれる研究があります。サイトは細胞,メトリーは計測するという意味で,細胞を計測するシステムです。ゴーストイメージングと言われる1画素カメラにインスピレーションを受けたサイトメトリーなので,ゴーストサイトメトリーと呼ばれています。 計算機合成ホログラフィーでは,逆関数に畳み込みニューラルネットワークを用いることで,たくさんの反復演算を行わなくても,非常に高速にホログラフを生成することができます。
近年,発展がめまぐるしい情報科学にイメージセンサーなどのイメージングシステムを適用することによって,これまでと違うカメラシステムやディスプレイシステムができることを感じてもらえれば幸いです。
東京大学 大学院 情報理工学系研究科 准教授 堀﨑 遼一
2010年 大阪大学 大学院 情報科学研究科 博士後期課程修了2010年~2020年 大阪大学 大学院情報科学研究科 助教
2017年~2020年 JSTさきがけ(兼任)
2020年~現在 東京大学大学院情報理工学系研究科 准教授