セミナーレポート
自動運転のためのセンサーフュージョン技術芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 教授 伊東 敏夫
本記事は、画像センシング展2022にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
>> OplusE 2022年7・8月号(第486号)記事掲載 <<
自動運転に必要なセンサー
1956年,アメリカでは,道に磁気ネイルを埋め込み自動車が走るインフラベースでの未来の自動運転の新聞広告が出ました。これは電力会社の広告でしたが,1959年にはGMがモーターショーで未来コンセプトカー「サイクロン・コンセプト」を発表しました。これにはミリ波レーダーが搭載されていました。将来,自動運転をするには,まず自動車側で独立した自律的なセンサーがついていないと話にならないということです。しかし,当時のレーダー技術は非常にコストが高い課題がありました。その後,半導体レーザーが実用化され,車載カメラも使えるようになり,レーザーとカメラでの運転支援システムが始まりました。しかし,今の運転支援システムは,特にACC(Adaptive Cruise Control:車間距離制御装置)では距離の問題などもあり,レーザーではなく,雨や霧に強いレーダーが主体になっています。運転支援用のLiDARは,最初は3本の太い固定ビームにより真ん中と両端を見るような簡易なものでした。それが1本の細いビームを揺動させるファンビーム方式に代わりました。そして,ロボット走行ではレーザーが生き残っています。DARPAチャレンジによる自律走行車では,2007年にスタンフォード・レーシングとVelodyneが共同でアーバンチャレンジに Velodyne HDL 64EというLiDARを搭載し,優勝しました。これは,自車周囲360 ℃をスキャニングし,周りのポイントクラウドを得ることにより,ポイントクラウドによる自車周辺3Dマップ製作を可能にしました。GPSが使えなくても自己位置推定が簡単にでき,かつポイントクラウドの差分を見ることで障害物もわかります。
世界初の自動運転レベル3の発表は,Audi A8でしたが,世界的に通用する法律を作り実際に走ることができたのは,ホンダ レジェンドでした。どちらもLiDARがキーを占めています。レベル3以上になって,歩行者や自転車,自動車が混在しているような一般道を視野に入れた状況では,レーダーだけでは空間解像度が悪く,光学的なLiDARとカメラで補完する方式が一般的になると予想されます。
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芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科 教授 伊東 敏夫
1982年 神戸大学工学部システム工学科卒業,同年ダイハツ工業㈱入社。以来,自動ブレーキを中心としたカーエレクトロニクスの研究開発に従事,2013年 同社を定年退職後,芝浦工業大学 システム理工学部 機械制御システム学科に入職。運転支援システム研究室を立ち上げ,自動運転用センサー,HMI,車両の研究開発をテーマとする。