セミナーレポート
マシンビジョンの未来を拓く ――コンピュテーショナルフォトグラフィ技術広島市立大学 日浦 慎作
本記事は、国際画像機器展2013にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
露光の時間軸方向への符号化やカメラの絞りの符号化で,ブレやぼけを除去
カメラは入射する光を一定の範囲について積分します。しかし,積分区間にちょうどn周期が収まるような周波数の情報は失われ,露光時間内の被写体のブレや距離の違いによるぼけが起こります。それに対してシャッターの開閉を何回も行えば,時間の積分の特性が改善されるので,ブレを取り除くことができます。これを,露光を時間軸方向に符号化したCoded Exposure(符号化露光)といいます。これとよく似たものに,カメラの絞りの部分を符号化する符号化開口という方法があり,通常の絞りの代わりにたくさん穴が空いた特殊な絞りを入れて撮影すると,簡単にぼけを取り除くことができます。画像のぼけ除去では,空間周波数特性にゼロ成分があると割り算ができず,また値が小さいとノイズに弱いという問題があります。円形開口ではゼロに近い値が多く,ぼけが完全に除去できませんが,符号化開口を装着すると,ぼけがきれいに除去できます。
ところが,これには1つの問題があって,ぼけの大きさは距離によって変化するので,ぼけの除去には正しいぼけの大きさが必要になります。そこで,Depth from Defocusという方法を用いて,画像に含まれる相対的なぼけ量を評価することで,距離を推定します。
そのために,私は1997年から99年にかけて,多重フォーカスカメラと符号化開口を用いた実時間距離画像計測を行いました。レンズに符号化開口を装着し,これを3層のセンサーで撮像します。計測後に復元された完全合焦画像では,ぼけの除去に成功しました。当時はあまり話題になりませんでしたが,最近では注目されています。
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広島市立大学 日浦 慎作
1993年大阪大学基礎工学部制御工学科飛び級中退,1997年同大大学院博士課程短期修了. 同年京都大学リサーチアソシエイト,1999年大阪大学大学院基礎工学研究科助手,2003年同助教授. 2008-2009年マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員准教授. 2010年広島市立大学大学院情報科学研究科教授. 三次元画像計測,コンピュテーショナルフォトグラフィ等の研究に従事. 2000年画像センシングシンポジウム優秀論文賞,2010年情報処理学会山下記念研究賞,2012年MIRU優秀論文賞等受賞. 電子情報通信学会,情報処理学会,日本バーチャルリアリティ学会各会員.博士(工学).