セミナーレポート
社会インフラ維持管理のための画像処理技術の可能性と期待東京工業大学 小林 彬
本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
社会インフラの維持管理を目的としたモニタリングが今,大きな関心を呼んでいる。講演ではその社会的契機と世の中の機運,技術開発の動向が概説され,主体となる点検作業の実態及び求められるセンシング技術への要望が話された。特にリスクマネジメントの観点から,緊急の整備が必要になるコンクリート橋の亀裂損傷の検出や監視のための新技術として,画像処理的技術応用の可能性と期待が述べられた。
■橋梁点検の補完・高度化のために高まるモニタリングへの期待
2007年米国ミネソタでの橋梁崩落,2010年沖縄での橋梁崩落などから,橋梁はおおよそ50年ほどで崩落する場合があることが明らかになり,社会インフラモニタリングへの関心が高まっている。日本では,2011年の東日本大震災,2012年12月の笹子トンネル天井板落下事故を契機に,平成25年は社会インフラ維持管理元年といわれ,政府も疲労や環境作用による劣化予測(モニタリング)技術の開発を成長戦略として,推進していこうとしている。安全・安心の社会の実現が目指される中で,それを客観的に保証できるのは計測技術だけであり,それを積極的に展開し,高度なシステムを実現するのも成長戦略の一環だ。政府の日本再興戦略&ICT成長戦略では2020年までにインフラの20%はセンサー等を活用して,道路・橋梁等の効果的な維持管理を実現するとしている。国内の橋梁数は2m以上が70万,15m以上が15.7万あり,総延長は9,799km,20年後には建設後50年を経過した橋梁が約70%に達する。橋梁の点検は近接目視点検が基本で,点検項目は26項目,平成26年7月から2m以上の橋梁は5年に1度の点検が義務づけられた。点検を補完・高度化するモニタリングへの要望として上がっているのは,近接目視点検作業の支援・機器化,常時機器計測による予防保全,災害時における2次災害予防である。
橋梁の疲労は橋桁の下面部分の引張りによる断裂と橋台上で橋桁を支える支承の圧縮によるダメージが主なものである。そこで橋梁の様々な場所にセンサーを付け,無線でデータを収集し,疲労損傷度の算出と疲労亀裂発生時期を推定する橋梁モニタリングシステムが考案されている。米国では橋梁に低消費電力の無線加速度センサーを設置,自立電源とクラウドでの管理,データ分析を複数企業の協業によるオープンイノベーションで行う橋梁モニタリングシステムが開発されている。
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東京工業大学 小林 彬
1969年 東京工業大学大学院博士課程修了(制御工学専攻)工学博士 1987年 東京工業大学工学部教授 2005年 東京工業大学定年退職 名誉教授 2005年 大学評価・学位授与機構教授(?2008年) 帝京平成大学教授(2012年定年退職) 2012年 次世代センサ協議会副会長&社会インフラ・モニタリング研究会代表 現在に至る