セミナーレポート
社会インフラ維持管理のための画像処理技術の可能性と期待東京工業大学 小林 彬
本記事は、国際画像機器展2014にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
■コンクリート橋は鋼材/鉄筋が腐食し,やせ細って,劣化・損傷
橋梁は鋼橋とコンクリート橋に大別され,掛け替えに至る劣化・損傷のプロセスが違う。鋼橋は自動車荷重などの外力によって,疲労損傷等の亀裂が発生,成長し,劣化・損傷が進む。一方,コンクリート橋はアルカリ骨材反応(ASR)によるコンクリートの劣化,亀裂発生,コンクリートの剥離・剥落,塩害や塩分・水分の侵入によって,鋼材/鉄筋が腐食,やせ細って,劣化・損傷が進行する。段階によって,モニタリング内容が異なるため,どのフェーズにあるかをきちんと把握する必要がある。塩害は塩分の浸透でさびが発生するもので,塩分は拡散によって浸透するため,最初はそれほどでもないが,次第にコンクリートにしみ込んでいく。そして,コンクリートの亀裂・ひび割れから始まり,コンクリートの剥離・剥落,鉄筋/鋼材の露出・腐食,やせ細り・腐食が進行して,最終的に断裂する。どの段階かが分かれば,手を打ちやすく,いつ断裂が起きるかが予測できるため,画像処理技術による崩壊プロセス進展の数量化が有効である。実際に,2007年11月から3年間,橋梁の亀裂をモニタリングした例がある。橋梁の亀裂部にゲージをセットし,ゲージの伸びにより,亀裂の成長を検出した。その結果,劣化が著しかった下り線側では,頂部付近の計測ポイントで計測開始から2年後の2010年夏までにかけて,季節変動を繰り返しながら,少しずつ亀裂が増加した。その後,さらにひび割れが進み,計測3年で増加量が0.08mmとなっている。亀裂の拡大はそれほど大きな量ではないので,目視で発見しようとすると非常に大変だ。また,別の亀裂変位計では計測初期の半年間は膨張する傾向が認められた。しかし,2008年から気温の上昇と共に夏に膨張が進行し,秋から冬にかけては進行速度が小さくなるサイクルを繰り返している。2010年で0.19mm/年と徐々に増加しており,アルカリ骨材反応(ASR)膨張は完全には抑制されていない。
腐食や亀裂,破断,膨張などの画像は多数撮影されており,様々なパターンがある。放置すれば,剥離を生じる浮きは目視では把握できないため,赤外線画像調査や打音調査で確認する。また,塩害によって,鉄筋がやせ細り,鉄筋断面積が大幅に減少するケース,表面全体が激しく腐食するケース,金属の表面に小さな孔ができ,その内部で腐食が進む孔食が見られる腐食のケースなどがある。これらへの対策も大きな課題である。
<次ページへ続く>
東京工業大学 小林 彬
1969年 東京工業大学大学院博士課程修了(制御工学専攻)工学博士 1987年 東京工業大学工学部教授 2005年 東京工業大学定年退職 名誉教授 2005年 大学評価・学位授与機構教授(?2008年) 帝京平成大学教授(2012年定年退職) 2012年 次世代センサ協議会副会長&社会インフラ・モニタリング研究会代表 現在に至る