セミナーレポート
先進モビリティにおけるバス・トラックの自動運転技術開発について先進モビリティ(株) 代表取締役 青木 啓二
本記事は、国際画像機器展2017にて開催された特別招待講演を記事化したものになります。
自動運転車の取り組み動向
自動運転車の開発の歴史を振り返ると,日米欧では1975年から国家プロジェクトとして,様々な自動運転開発が行われていました。画像認識で車はどの程度動けるのかという研究目的から始まり,その後実用化に向けた研究開発を経て,現在は様々な自動車メーカーがレベル2,レベル3での高速道路における自動運転を進めています。初期の画像認識による自動走行では,カーネギーメロン大学の金出武雄先生がロボット研究所所長時代の1995年に「Nablab5」をつくり,画像認識だけで大陸横断に初めて成功しました。また,国内で最初だったのは,日産自動車と富士通による国家プロジェクトのPVSがあります。これは,カメラ3台で白線認識,ステレオカメラとレーザーレーダーで障害物認識を行うものです。
現在の自動運転車の開発動向としては,トラックにおいては経済産業省の後続車無人隊列走行システムがあり,これは日本で行われているトラックの自動運転に関して唯一のプロジェクトです。
バスに関しては,先進モビリティ(株)が小型バスの無人化に取り組んでいます。海外では,Navya社とEADYMile社がすでに無人自動運転バスの生産販売を始めています。車内にはハンドルもブレーキもありません。基本的には,RTK-GPSおよびレーザーレーダーの点群データによる測位を利用しています。一方,国内のバス自動運転に関しては,政府が自動運転の実証実験プロジェクトを進めています。鉄道駅から自宅までのラストワンマイルをオンデマンドで無人走行させようと,4市で実証実験が行われる予定で,先進モビリティは茨城県日立市のプロジェクトに協力しています。また,先進モビリティでは,中山間地域の活性化を想定した道の駅自動運転実証実験や,沖縄におけるバス自動運転,トラックの自動隊列走行実験に取り組んでいます。
内閣官房の未来投資会議ロードマップでは,トラックに関して,2020年に新東名高速で無人隊列走行の実証実験を行い,実用化のための法整備を進めるとともに,同様に無人運転バスに関してもサービス化の実現を目指しています。
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先進モビリティ(株) 代表取締役 青木 啓二
1971年トヨタ自動車入社。同社研究部にて米国運輸省の「I-15 自動運転PJ」用の自動運転車の開発を担当後,同社IT・ITS企画部にて「愛・地球博」用自動運転バス「トヨタIMTS」の開発を担当。2008年,日本自動車研究所に出向すると伴に,NEDO「エネルギー ITS推進事業」の自動運転・隊列走行技術の開発を担当。2014年,先進モビリティ㈱代表取締役に就任。